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童話でHappy♪

ハッピーエンドの童話たちが あなたの気分をHappy♪にしちゃいます
週2回(水・土辺りに)更新します

雪だるま
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    黒が危ない!(江戸小話より)

    横町の隠居(いんきょ)と表町の隠居が囲碁を打っていました。

     

    二人とも、将棋が大好きで、朝から晩までやっていたのですが、ちょっと気分転換に、と囲碁を始めてみました。

     

    やってみると結構おもしろく、二人で書物を見ながら、探り探り楽しんでいました。

     

    今日は、通りに面した表町の隠居の家の玄関前で、長椅子を置いて囲碁を打っています。

     

    二人が何回も対局している間に、何人もの人の往来がありました。

     

    今も、何回戦目かの対局を行っています。

     

    この対局は今までになく接戦で、二人ともじっくり考えながら一手一手を慎重に打っていました。

     

    その為、対局が始まってから、だいぶ時間が経過していました。

     

    二人は集中していました。

     

    そんな静かに白熱した対局をしている二人のところへ、通りがかりの男が近寄って来ました。

     

    そして、碁盤を見て言いました。

     

    「おっ、黒が危ねぇぞ」

     

    対局に集中していた二人の隠居は同時に男の顔を見ました。

     

    男の顔を二人とも見たことがありませんでした。

     

    きっと囲碁が好きな男なんだろうと思い、碁盤に目を戻しました。

     

    黒は横町の隠居の石でした。

     

    今、まさに次の手を打とうと思ったところに横やりが入ったので、どこが危ないのかじっくり考えました。

     

    横町の隠居は隅から隅まで見渡しましたが、危ないといわれるほどの場所を見つけることができませんでした。

     

    聴くのもしゃくなので、仕方なく、元々打とうと考えていたところに石を置きました。

     

    すると男は「お、今度は、白も危なくなった」

     

    と、言いました。

     

    横町の隠居は(すると、オレが打ったこの手は良かったってことか)と思いました。

     

    白石は、表町の隠居の石でした。

     

    自分ではさほど危ない展開ではないと思っていたので、何か見落としているところはないかと、隅々まで確認しました。

     

    (ははーん、うん、ここだな)

     

    表町の隠居は危ないところを見つけ、パチン、っと白石を置きました。

     

    「どうだ!」

     

    「むむっ」

     

    横町の隠居は痛い手を打たれたと思い、うなり声を上げました。

     

    すると男が言いました。

     

    「ほらほら、白が危ない」

     

    良い手を打ったと思ったのに、危ないと言われた、気の短い表町の隠居は

     

    「危ないことなんてない!」

     

    と、男に言いました。隅々まで確認して打った手ですから自信がありました。

     

    「いや、危ない、白が危ない」

     

    「そんなことは無い」

     

    表町の隠居は負けずに言いました。

     

    そんなやり取りの最中、横町の隠居は、次の一手がひらめきました。

     

    パチン!

     

    これは会心の一手だと横町の隠居は思いました。

     

    表町の隠居も目を大きく開いて、コレはマズイという顔をしました。

     

    「フッ」

     

    横町の隠居はニヤリと自信の笑みを浮かべました。

     

    「おぉ、黒も危ないままだ」

     

    と、男は言いました。

     

    さすがに堪忍袋の緒が切れた隠居二人は同時に男を見て、厳しい口調で言いました。

     

    『どこが危ないって言うんだ!!』

     

    隠居二人に同時に言われて、男はちょっと驚きました。

     

    でも、何食わぬ顔で

     

    「そこです」

     

    と碁盤の上を二か所、指で指しました。

     

    「黒は右上隅の石が、白は右下隅の石が危ないです」

     

    二人の隠居は同時に目を碁盤に向けました。

     

    しかし、二人とも指摘されたところを見ても、まったくピンときませんでした。

     

    そして、碁盤を挟んで、お互いの目を合わせて、小首をかしげました。

     

    横町の隠居は、きっと、自分たちでは分からないことがあるのだろうと思い、男に言いました。

     

    「実は、二人とも囲碁を始めたばかりで、どこが危ないのかさっぱり見当がつかん。具体的に言っていただけるか?」

     

    すると男は言いました。

     

    「おらも、囲碁のことなんて、皆目わからねぇなぁ〜、でもよ、さっきっから、黒い石も白い石も、今にも落ちそうなんだよ」

     

    男が指さした石は、碁盤の端すれすれに置かれていて、今にも落ちそうな状態でゆらゆらしていました。

     

    「なぁ〜」

     

    と、男は言いました。

     

    隠居二人は、目を合わせました。

     

    やっと「危ない」の意味が分かった気の短い表町の隠居は、

     

    「はんっ!」

     

    と、声を吐き、家の中へ入って行きました。

     

    横町の隠居は「教えてくれてありがとう」と男に言ってから、落ちそうな石を直して、碁盤をゆっくり両手で持ち上げて、表町の隠居のあとを追って家の中に入りました。

     

    残された男は「ありがとう」と言われたので、良いことをしたと思い、笑顔で帰って行きました、とさっ。

     


    おしまい

     

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    雪だるま
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      借金取りがやってきた(江戸小話より)

      むかし、むかしの話です。

       

      ある長屋に、青年が住んでいました。

       

      青年は、気立てが良く、めったに怒らない性格で人を疑うことも知りません。

       

      それだけに、だまされて、自分が借りたわけでもない借金を、かたがわりしてしまうことが多くありました。

       

      そして今日も、借金取りがやって来ました。

       

      「今日こそは、ちゃんとはらってもらうよ」

       

      借金取りは青年に強い口調で言いました。

       

      青年は、何度も言葉をはぐらかして、借金取りにお金を返さずにいたので、借金取りはとても怒っていました。

       

      強い口調の借金取りに、ゆかに腰をおろした青年は、ビクともせずに冷静に対応しました。

       

      「もうちょっと待ってもらえますか、実は、近々、お金が手に入るあてが、三つもあるものですから」

       

      「なに、お金が入るあてだと? しかも三つも?」

       

      「はい!」

       

      すずしい表情で返事をする青年を見て、借金取りはおどろきました。

       

      いつもお金がない青年に、お金が入るあてがあるハズがないと思ったからです。

       

      しかも、三つなんてあるハズがない。

       

      「その三つの“あて”とやらを聞かせてもらいましょう」

       

      借金取りは、半身でゆかに腰かけ、聞く体制になりました。

       

      「イイですよ、まず一つ目は」

       

      青年は人差し指をピンとのばして言いました。

       

      「私が、どこかで大金をひろうかもしれません」

       

      「なんだと!」

       

      借金取りは声を上げました。

       

      「バカ野郎、そんなのは“あて”とは言わん! 二つ目はなんだ!」

       

      「はい、二つ目は、お金持ちが私に大金をわたしてくれるかもしれません」

       

      「なっ、このご時世、そんなやつが都合よくいるわけないだろう、どこまでのーてんきなやろうだい、まったく」

       

      借金とりはあきれた口調で、

       

      「で、三つめはなんだ、またどうせ起こりそうもない、もうそうの話なんだろうがな」

       

      「いいえ、三つめが、一番可能性が高いと思っているのです」

       

      青年は、自信ありげにそう言いました。

       

      「お、そりゃぁいいことじゃねぇか、その自信あるっていう、三つめを聞かせてもうらおうじゃないか」

       

      「はい」

       

      と言ってから青年は借金取りに顔を近づけて、「それはですね」

       

      「それは、」

       

      「あなたが」

       

      「オレが?」

       

      「ポックリと死んでしまうかもしれません」

       

      「─────。」

       

      借金取りは、いっしゅん、だまってしましました。

       

      「───オレが、死ぬ? ポックリと?」

       

      「はい!」

       

      笑顔で返事をする青年に、あきれ返って借金取りは勢いよく立ち上がり、大声で言いました。

       

      「まったく! なんてやろうだ! このオレが、ポックリと死ぬだと! 聞いて損した。残念ながらオレはこのとおりピンピンしてりゃ! お前のあてはぜんぶ大外れだ、さぁ、すぐに借金かえしやがれ!!」

       

      ゆかに土足の足をかけ、感情が高ぶって、今にも暴れそうな借金取りに、「まぁ、まぁ」と青年は落ち着いた口調でたしなめてから、言いました。

       

      「そう怒らずに、じょうだんです、ほんのじょうだん」

       

      と、青年は自分の後ろから、ふろしき包みを取り出しました。

       

      「お金なら、このとおりあります。ちゃんと利子もつけています。確かめてください」

       

      借金取りは、目を丸くして、キョトンとした表情でふろしき包みを受け取り、あわてて開いてなかを確認しました。

       

      そこには、貸したお金よりも、かなり多くの現金がありました。

       

      借金取りはキョトンとした表情のままで、「こりゃあ一体、どうしたんだい」とたずねました。

       

      青年は、すずしい表情で言いました。

       

      「はい、実は、だいぶ前、道を歩いている時に、お金を拾い、奉行所(ぶぎょうしょ)に届けていたのですが、持ち主が現れないと、おとつい返って来ました。それがそのお金の半分です」

       

      青年はふろしき包みのお金を指さしました。

       

      借金取りは、だまって青年の話を聞きました。

       

      「それと、ちょうど昨晩、居酒屋でとなりに座った人と話をしていたら、たいそう私のことを気にいってくださって、好きなことでもしろ、と大金をくれたのです。それを合わせたのがそのお金です」

       

      驚いた借金取りの口は、あんぐりをと開きっぱなしになってしまいました。

       

      「そんなことって……、あるもんなんだなぁ……」

       

      借金取りは、ひとり言のようにつぶやきました。

       

      「はい、あったんです」

       

      と、青年は穏やかな口調で言いました。

       

      少し時が経ち、やっと我に返った借金取りは、ふろしきを大事そうに包み直し、持っていたふくろに入れました。

       

      「確かに、金は返してもらった。もう、会うこともないだろうよ、じゃなぁ、達者でな」

       

      と、借金取りは帰ろう背をむけました。

       

      青年は借金取りの背中に向けて、大きな声で言いました。

       

      「あなたも、くれぐれも気を付けて、なんたって“あて”は二つ当たりましたから!」

       

      帰ろうとしていた借金取りは、ビックと、かたを上げました。

       

      「あてが二つ、当たった?」

       

      借金取りは、ふり返り、青年の顔を見ました。

       

      「三つめは確か……」

       

      青年は、さわやかな笑顔で借金取りを見つめました。

       

      借金取りは何も言わず、周りをキョロキョロしながら、落ち着かない足取りで帰って行きました。

       

      青年は長屋の外に出て、手をふりながら言いました。

       

      「お気を付けて〜」

       

       

      おしまい。

       

       

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