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童話でHappy♪

ハッピーエンドの童話たちが あなたの気分をHappy♪にしちゃいます
週2回(水・土辺りに)更新します

雪だるま
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    ナシ売りと青年(世界の昔話より)

    むかしむかしの話です。

     

    青年は、とある街に立ち寄りました。

     

    遠い街に出稼ぎに行き、長い仕事がやっと終わり故郷へ帰る途中です。

     

    青年が街をブラブラと歩いていると、道端で一人の男が荷車を停めて何かを売っているのが目に入りました。

     

    なんだろうと思い近寄って行くと、甘い果物の香りがしてきました。

     

    「さぁ、さぁ、甘いナシだよ。この辺じゃ取れない、甘くておいしいナシはいらんかい」

     

    男は通りを歩く人に声をかけていました。

     

    青年は、給料ももらったし、故郷の土産として買ってみようと思い、懐の財布を取ろうとしました。

     

    すると、ナシ売りの男に、青年よりも先に近づく者がいました。

     

    ボロボロの服を着たお爺さんです。

     

    髪の毛は長く、まったく手入れしていないようなボサボサのねずみ色をしていました。

     

    お爺さんはそのボサボサの頭を、ナシ売りに向かって深々とさげました。

     

    そして頭をあげると力ない声で言いました。

     

    「スミマセンが、ナシを一つ分けてはいただけないでしょうか、のどが渇いて渇いて、今にも倒れそうなもので」

     

    声をかけられたナシ売りは、とても迷惑そうな顔をして、

     

    「なんだい爺さん、金は持っているのかい?」

     

    「いや、持ち合わせておりません」

     

    「それじゃ、分けてやれる訳がないだろう、ほら、商売の邪魔だ、あっち行け」

     

    と、シッシッ、と手で払う仕草をしました。

     

    お爺さんは、しょぼん、っと肩を落としてその場を去ろうとしました。

     

    「ちょっと待って、お爺さん」

     

    青年はたまらずお爺さんを呼び止めました。そして、ナシ売りに言いました。

     

    「ナシを一つおくれ、金ならある」

     

    「金があるなら、問題ありませんよ、ハイ、毎度アリ」

     

    青年はナシ売りから渡されたナシをお爺さんの前に出しました。

     

    「お爺さん、食べて」

     

    お爺さんの目は差し出されたナシに、くぎ付けになりました。

     

    すると、ナシ売りが言いました。

     

    「お客さん、そう言うことされたら困るんですよね、そんな爺さんにやるのなら、私の見えないところでやってもらえますかね」

     

    青年は、そんなナシ売りの方には目もくれず、

     

    「お爺さん、向うに椅子があります。あそこへ行きましょう」

     

    と、お爺さんを引っ張って行きました。

     

    お爺さんを椅子に座らせ、青年はナシを差し出しました。

     

    「ハイ」

     

    お爺さんは、差し出されたナシに、またもや、くぎ付けになりましたが慌てて首を振り、

     

    「いっ、いやぁ悪い、若いの、あんたが買ったんだから、あんたが食べなよ」

     

    「大丈夫ですよ、ボクはのどが渇いている訳じゃないから、さっ、食べて」

     

    「そっ、そうですか、感謝いたします」

     

    お爺さんは差し出されたナシを両手で大切そうに受け取り、一口かじりました。

     

    「おいしい、おいしいよ」

     

    と言いながら、おじいさんはあっという間にナシを食べてしまいました。

     

    「ありがとう、ありがとう」

     

    と、おじいさんは感謝のおじぎを何度も何度もしました。

     

    「いいよ、お爺さん、ボクはナシをあげただけだよ、そんなに感謝されても困るよ」

     

    と青年は言ってから、

     

    「じゃ、ボクは行くから、元気でね」

     

    青年は片手を上げて立ち去ろうとしました。

     

    「待ってくれ、若いの」

     

    と、お爺さんは呼び止めて、

     

    「せめてお礼だけでもさせてくれ」

     

    「いいよ、いいよ」

     

    「いや、ダメだ」

     

    お爺さんは力強い口調で言いました。

     

    青年はその声に圧倒され、立ち止まりました。

     

    「いいかい、よーく見てるんだよ」

     

    お爺さんは先ほど食べたナシの芯の部分を、足元の土に埋め込みました。

     

    「こうやって、埋めてじゃなぁ、手の平をこうやって」

     

    と、空に向かって両手を広げました。

     

    「そして言うのじゃ、のびろ、とね」

     

    お爺さんは青年の顔を見て、

     

    「一緒にやってくれるかの」

     

    「ボクもですか」

     

    お爺さんは力強くうなずいたので、青年は仕方なく付き合うことにしました。

     

    青年はお爺さんと同じように両手の手の平を空に向けました。

     

    「よい、よい」

     

    お爺さんはうなずいてから、

     

    「それでは参るぞ、せ〜のぉ」

     

    『 のびろ!!! 』

     

    二人は声を合わせて叫びました。

     

    すると、地面がらちょこんと緑色の芽が出たと思ったら、シュルシュルシュル、と伸び始めました。

     

    すぐに茶色っぽくなり枝ができ、ポンポンポンとあっという間に白いつぼみがいっぱいできました。

     

    そして、下の方から、パッ、パッ、パッと、次々を白い花が咲いていきました。

     

    その頃になると、なんだなんだと人が集まって来ました。その中には先ほどのナシ売りも交じっていました。

     

    白い花はあっという間にちってしまい、あとに実がたくさん実りました。

     

    青年は、目の前で起きたことに、ただただ驚いて、両手を広げたまま、口をあんぐりと開けて突っ立っていました。

     

    そんな青年に向かってお爺さんは言いました。

     

    「ナシの実です。おいしいですから食べてみて下さい、さぁ、さぁ」

     

    お爺さんは一つもぎって青年に渡しました。

     

    ナシをもらった青年は、呆気に取られて心ここに有らず、という状態のまま、ナシを一口ほうばりました。

     

    すると、頭の中が一気に冴えわたりました。

     

    「ウマイ!!」

     

    青年は、二口三口とナシをがむしゃらにほうばりました。

     

    お爺さんは青年の姿を見て微笑んでから、集まった人たちの方を向きました。

     

    「お集りの皆さん、天下一おいしいナシです。早く食べないとあっという間に熟して、落ちてしまいますよ」

     

    と、声をかけました。

     

    集まった人たちはすぐにナシをもぎり、一口食べました。

     

    「ウマイ!」

     

    と言う声がアチコチから上がりました。

     

    そして中には、

     

    「さっき買ったナシ売りのよりも、断然、いや圧倒的においしい」

     

    と言う者までいました。

     

    ナシ売りは呆然とその光景を眺めていました。

     

    お爺さんは、ナシを一つもぎ取り、ナシ売りに渡しました。

     

    「ホレ、お主も食べてみろ」

     

    ナシ売りはナシを受け取り、しぶしぶ、食べてみました。

     

    一口食べた瞬間に、ナシ売りの目が変わりました。

     

    「ウマイ、ウマすぎる」

     

    と、ガブリつくように食べました。

     

    お爺さん青年のところに近づきました。

     

    「おいしかったですか」

     

    「ハイ、それはもう」

     

    「それはヨカッタ、その食べ残した芯の中にあるナシのタネ、今すぐ取りなさい。そして大切に持って帰って、庭に埋めるといいですよ」

     

    青年はすぐ言われたとおりにしました。

     

    タネをとり終え、お爺さんの方を見ると、立ち去ろうとしている後ろ姿が見えました。

     

    青年はお爺さんを追いかけようとしましたが、その途端、ナシの実が次々に地面に落ち、木は、ガリガリガリ、と音を立てて枯れてしまいました。

     

    青年は枯れていく木を眺めていました。ふと我に返り、辺りを見渡したときは、もうお爺さんの姿はありませんでした。

     

    「不思議なお爺さんだったなぁ」

     

    そして青年は、ナシのタネを懐に大切に入れ、故郷に帰りました。

     


    故郷に帰った青年は家族にこの街であったことを話し、早速、庭にタネをまきました。

     

    そして、家族総出で、両手を天に向けて「のびろ!」と叫んでみました。

     

    ところが、今度は芽が出ませんでした。

     

    何度やっても、芽は出てきませんでした。

     

    ガッカリした青年を家族は慰めてくれました。

     

    青年はあきらめず、毎日、その儀式を行いました。

     

    すると、何日か経ったとき、ちょこんと芽が顔を出しました。

     

    青年は飛び上って喜びました。

     

    そしてスクスクと成長し、何年か後には天下一のナシよりは若干味が劣るけど、甘くてとてもおいしいナシの実が毎年取れるようになりました。

     

    青年はそれを家族で食べ、余ったものはご近所に配り、さらに余ったものは街で売り、豊かに暮らしました。

     

    青年はたまにあの不思議なお爺さんを思い出し、

     

    「あれはきっと、神様が化けていたのだろう」

     

    と感謝するのでした。

     


    おしまい

     

     

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    雪だるま
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      忘れな草(世界昔話より)

      「危ないよ! やめなよ」

       

      女の子は叫びました。

       

      「大丈夫だよ、すぐ採ってくるから」

       

      男の子は笑顔でそう言いました。

       

      二人は大の仲良しで、今日は近くの山へ遊びに来ています。

       

      崖に囲まれた場所で二人は話をしています。

       

      「すぐって、崖の上だよ、どうやって登って行くの?」

       

      「大丈夫さ、力には自信があるから」

       

      男の子は力こぶを見せました。

       

       

      今からほんの少し前のことです。

       

      二人が山を歩いていると、崖に囲まれたところにたどり着きました。

       

      「わぁ、可愛い花が咲いてる」

       

      女の子は崖の中腹あたりを見つめて言いました。

       

      男の子は目をキラキラさせている女の子の横顔から、

      目線を崖の中腹にうつしました。

       

      「ホントだ、キレイだね」

       

      そこには、小さな青い花がありました。

       

      崖の頂上から落ちる滝の側で、小さな体に青い花をたくさんつけて、

      健気に咲いています。

       

      「ボクが採ってくるよ!」

       

      「ダメだよ、危ないよ、落っこちたらどうするの?

       下は流れの速い川よ」

       

      崖の頂上から滝が流れ、川は、ザアー、ザアーと

      音をたてて勢いよく流れています。

       

      「平気だよ、泳ぎには自信があるから」

       

      泳ぐ真似をしている男の子に、女の子は近づいて力強く言いました。

       

      「ダメよ、イイ、よく聞いて───」

       

      女の子は、男の子の両腕を掴み、

      ギュッ、っと力を入れて握りしめました。

       

      「もう分かった、分かったよ、痛いから、腕、離してよ」

       

      「行かない?」

       

      「うん、行かない」

       

      男の子が神妙な顔で言ったので、女の子は手を離しました。

       

      すると男の子は、

       

      「へへへへーッ」

       

      と、いたずらっぽい声を上げきびすを返すと、

      あっという間に崖を登り始めました。

       

      「もう、やめなって言ってるのに!」

       

      そう言う女の子の言葉が聞こえないかのように、

      男の子は滝の水しぶきを浴び、びしょびしょになりながらも、

      崖をよじ登っていきました。

       

      女の子は落ちないかと心配で、

      手を祈るように組んで見つめています。

       

      男の子が少し登ったところで足を滑らせました。

       

      「きゃっ」

       

      女の子は小さく悲鳴を上げました。

       

      男の子は体勢を整えて、

       

      「大丈夫!」

       

      と笑顔を女の子に向けました。

       

      男の子はなんとか青い花に手が届くところまでよじ登りました。

       

      そして手を伸ばし花を掴むと、女の子に向けて手を上げました。

       

      女の子の表情が少し明るくなりました。

       

      「あっ、」

       

      一瞬の出来事でした。

       

      男の子の右足が濡れた石で滑り行き場を失いました。

       

      花を持つ手を高く上げていたので踏ん張れず、

      バランスを崩した男の子の体は、

       

      そのまま真後ろに倒れて行きました。

       

      女の子は息をのみ、体を硬直させました。

       

      そして何もできず、後ろ向きに落ちていく男の子の姿を、

      ただ呆然と眺めていました。

       

      女の子には、時がゆっくりと動いているように感じました。

       

      ゆっくりと落ちていく男の子。

       

      女の子の耳には何も入って来ず、とても静かでした。

       

      静かに落ちていく男の子。

       

      落ちていく男の子を、ただただ見ていると、

      ふと男の子は女の子の方を向きました。

       

      そして男の子は笑みを浮かべて言いました。

       

      「受け取って」

       

      男の子の手から青い花が投げられました。

       

      ゆっくりと、弧を描いて飛んでくる青い花に

      女の子は手を伸ばしました。

       

      青い花は、ゆっくりと女の子の手の中に降りてきました。

       

      女の子は青い花を静かに手に乗せると、

      愛おしむかのように、優しく包みました。

       

      “バシャーン!!!!!”

       

      男の子の体は、川の中に落ちました。

       

      女の子は “ハッ” として、慌てて男の子に近づきます。

       

      男の子は顔を出し、片腕を大きく上げていました。

       

      川の流れが速く、男の子の体はどんどん女の子から離れていきます。

       

      女の子は、流される男の子を追いかけました。

       

      石だらけで足場が悪い地面につまづきながらも、

      必死に女の子は走りました。

       

      しかし、追いつけません。

       

      女の子の耳には、ゴーッ!ゴーッ!、という川の音だけが聞こえました。

       

      それは男の子を飲み込もうとしている

      荒々しい生き物の叫び声のように聞こえました。

       

      「イヤーッ!」

       

      思わず女の子は叫び声を上げました。

       

      すると、流されながら男の子が言いました。

       

      「ボクのこと、忘れないで……」

       

      川の音で消え入りそうな男の子の声を、

      女の子は必死で聴こうとしました。

       

      男の子はどんどん川に流されていきます。

       

      それでも必死にもがき顔を出しました。

       

      女の子も男の子から離れないように、走っています。

       

      男の子の顔は川から出たり入ったり繰り返しています。

       

      女の子は、男の子を絶対に見失わないよう目をこらします。

       

      男の子はなんとか川から顔を上げて、女の子の方を向きました。

       

      女の子は男の子の目をしっかりと見つめました。

       

      男の子も女の子の視線をしっかりと受け止めました。

       

      そして男の子は消え入るような声で言いました。

       

      「───大好きだよ…」

       

      川の音に邪魔されず、女の子には、はっきりと聴こえました。

       

      そして、それが女の子が聴いた男の子の最後の言葉になりました。

       

      女の子は一生懸命走りました。

       

      男の子を見失わないように目をこらしました。

       

      しかし、追いつけぬまま、

      男の子の体は、ついに見えなくなってしまいました。

       

      女の子はその場にしゃがみ込みました。

       

      そして、女の子は一言、呟きました。

       

      「私も、大好きだよ」

       

      両手には青い花が握りしめられていました。

       

       

       

      「さっきまで、二人であんなに楽しく山を歩いていたのに、

       なに、なぜ、どうして、こんな、こんな……。

       と、女の子は涙をこぼしました」

       

      と、女の子は言ってから、

       

      「って、こんな悲しいお話が出来上がっちゃったら、

       どうするのよ!」

       

      女の子は握った手に力を込めて男の子に向かって言いました。

       

      「痛いよ、分かった、分かったよ」

       

      男の子は、両手を引っ張られ、嫌そうに言いました。

       

      「ホントに?」

       

      女の子の真っすぐな視線を向けられ、男の子は少し視線をずらして、

       

      「うん」

       

      と、頷きました。

       

      女の子は、ジーッと、男の子の目を見てから、

      手を放しました。

       

      男の子は解放された手を擦りながら、

       

      「ったく、相変わらず物語作るのが好きだな、小説家にでもなれ」

       

      女の子はニコッと笑うと、

       

      「じゃっ、いこ」

       

      と言って、今度は優しく男の子の手を繋ぎました。

       

      男の子は女の子に引っ張られ歩き出しました。

       

      ふと、崖の花を見上げました。

       

      男の子は、崖に咲いている青い花を眺めながら、

       

      (今日のことは忘れないだろうなぁ……)

       

      と、思いながら、ふとあることに気付きました。

       

      「あ、」

       

      「どうしたの?」

       

      不思議そうに尋ねる女の子に、男の子はニッコリ笑い、

       

      「ううん、別に」

       

      「変なの」

       

      と、プイっと向こうを向いた女の子の後ろ姿に、

      男の子は小声で呟きました。

       

      「ボクも好きだよ」

       

      「え? 何?」

       

      ふり返った女の子に、

       

      「なんでもない!」

       

      男の子は笑顔で言って、

       

      「へへへへーッ」

       

      と、いたずらっぽい声を上げ、女の子を抜いて先に走り出しました。

       

      「もう、待ってよ」

       

      二人は、崖を後にして、楽しく山を降りていきました、とさ。

       

       

      おしまい。

       

       

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      雪だるま
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        お金はお金を呼んで来る(江戸小話より)

        あるところに退屈な人がいました。

         

        退屈な人は、退屈なので、ボー、っとしていました。

         

        ふと、この前、友だちが話していたことを思い出していました。

         

        「お金を拾うと、嬉しいよね

         しかも、お金を呼んで来るって言うよ。

         1円玉を拾うと、5円玉を呼んで来て、

         5円玉は10円を呼んで来て、

         どんどん大きなお金を呼んで来るんだよ」

         

        退屈な人は、少し考えました。

         

        (お金を拾って嬉しいなんて、ホントかねぇ……

         お金を拾ったって、警察に届けに行かなきゃならないだけ、

         めんどくさいじゃないか)

         

        退屈な人は、ちょっと律儀な人でした。

         

        おもむろに、自分の財布を開けてみました。

        なかには5円玉が1つありました。

         

        それ以外、コンビニのレーシトがあるだけで、

        お金は入っていません。

         

        (今晩、何食べよう……)

         

        退屈な人は、お金に縁がない人でもありました。

         

        退屈な人は、ちょっとうなだれましたが、

        気分転換にと、街へ出かけました。

         

        お金は落ちてないかと、キョロキョロと目配りしながら歩きました。

         

        でも、お金は見つかりませんでした。

         

        試しに、自販機の返却口にも手を入れてみました。

        すると、3つ目の自販機に100円玉が入っていました。

         

        おっ!と、退屈な人は喜びましたが、

         

        (これは拾ったと言えるのか?)

         

        と、小首を傾げました。

         

        律儀な退屈な人は、なにか罪悪感を感じたので、お金を返そうと、

        100円玉を自販機に入れて、電気がついた飲み物を買いました。

         

        80円の飲み物が買えたので、20円のおつりが出てきました。

         

        (おぉ、なんか得した気分)

         

        20円をとろうと返却口に指を入れました。

         

        “チャリ―ン”

         

        取り損ねた10円玉の一枚が地面に落ちてしまいました。

         

        10円玉はコロコロと転がっていきました。

         

        退屈な人は手に持っている10円玉をポケットに入れ、

        転がっている10円玉を取ろうとしましたが、

        そのまま転がって、自販機の下に入ってしまいました。

         

        (あーぁ)

         

        退屈な人は、一瞬、あきらめようとしましたが、

        気になったので、屈んで自販機の下を覗きこみました。

         

        自販機の下はうす暗く、目をこらして見ると、

        土やら埃やらがいっぱいです。

         

        (きたねー)

         

        さらに目をこらすと、10円玉らしきものが見えました。

         

        その横にはもう一個10円玉のようなものが見え、さらにその横には、

        銀色に光る硬貨のようなものも見えました。

         

        (あれは、もしかすると100円玉!)

         

        退屈な人はトキメキましたが、

         

        (イヤ、待てよ、100円玉だと思って取り出すと、

         50円玉だったことなんて、よくあることじゃないか)

         

        後でガッカリしないように、あれは50円玉だ、

        と、思うことにしました。

         

        なにせ退屈な人はお金に縁のない人でもありますから、

        そんな想像をしてしまうのでした。

         

        でも、どうやって取ればイイ、と退屈な人は悩みました。

         

        試しに、手を入れてみましたが届きそうにありません。

         

        その後も、這いつくばり、自販機の下をのぞきこみました。

         

        (あっ、)

         

        退屈な人は、今いるところが街の中だということを

        急に思い出しました。

         

        街で、這いつくばって自販機の下をのぞく恥ずかしい人に

        自分がなっていることに気づき、慌てて立ち上り、

        周りを見ないように早歩きで立ち去りました。

         

        そして、近くの建物の陰に隠れました。

         

        ふり返ると、さっきまでいた自販機が見えます。

         

        (あの下には、10円玉が2枚と50円玉がある。

         70円あったら、コロッケ一枚くらいは買えるだろう。

         もし、100円玉だったら……)

         

        退屈な人は“ブルンブルン”と頭を振りました。

         

        いらぬ想像はしちゃダメだ。

         

        それよりも、どうやって取るかだ。

         

        と考えながら見ていると、自販機の前に、

        二人の少年がやって来るのが見えました。

         

        (おや? 少年、棒を持ってるぞ)

         

        少年二人は、おもむろにしゃがみ込み、

        持っている細長い棒を自販機の下に入れました。

         

        (あいつら!)

         

        退屈な人は建物の陰から慌てて飛び出しました。

         

        少年たちは棒を上手く使い、あっさりと自販機の下から

        お金を取り出して、走り去ろうとしていました。

         

        「待て!」

         

        退屈な人は思わず声を上げました。

         

        「やべぇ!」

         

        少年たちは慌てて逃げました。

         

        慌てていたので、せっかく取ったお金を一枚落としてしまいました。

         

        “チャリ―ン”

         

        (あ、あれは!)

         

        退屈な人は、ちゃんと見ました。

         

        少年たちが落とした銀色したお金は、コロコロと転がっています。

         

        退屈な人は、慌ててお金を追いました。

         

        お金は、コロコロと転がって、今度は、

        何人か座れる横長のベンチの下に入っていきました。

         

        退屈な人は、すぐにしゃがみ込みました。

         

        ベンチの足の下に、確実に銀色したお金がありました。

         

        (よし!)

         

        退屈な人は心の中で声を上げました。

         

        すると、頭の上の方から声がしました。

         

        「てめぇ! 何してやがんだ!」

         

        退屈な人はスゴイ力で、グイッと引っ張り上げられました。

         

        目の前には、男の人の顔があり、とても怖い表情をしています。

         

        「てめぇ、オレの彼女の前に屈みこんで何する気だ!」

         

        退屈な人は横目で見ると、さっき自分が屈んでいたベンチに、

        スカートをはいた女の人が座っていました。

         

        退屈な人は慌てて、

         

        「誤解です、誤解、ボクはただぁ」

         

        と、言い訳しようとすると、ドン、と突き飛ばされて

        後ろへ倒れ込みました。

         

        「イテテテテ」

         

        退屈な人がお尻の辺りをさすっていると、

        女の人が立ち上がり「ほっとこう」と男の人を引っ張って、

        歩いて行ってしまいました。

         

        男の人は、不服そうにこちらを見ています。

         

        (な、なんなんだぁ……)

         

        退屈な人は、混乱しながらも、ちょっとホッとしました。

         

        そしてすぐに体勢を変えて、ベンチの下をのぞきました。

         

        ベンチの足の下に銀色のお金があります。

         

        取るにはベンチを動かさなければなりません。

         

        座っていた女の人もいなくなったので、

        退屈な人はベンチを横から力を込めて押しました。

         

        “ズズーッ”

         

        ベンチは、ちょっと横に動きました。

         

        退屈な人はすぐに、ベンチの下を確認しました。

         

        そして、

         

        「おぉぉぉぉぉぉ!」

         

        と、思わず叫んでしまいました。

         

        そこには銀色に輝く100円玉がありました。

         

        退屈な人は、100円玉をありがたそうにとりました。

         

        「おぉぉぉぉぉぉ!」

         

        100円玉をまじまじと眺めて、

         

        (なるほど、お金を拾うと、確かに嬉しいね)

         

        と、涙をこらえながら、心からそう思いました。

         

        「ちょっと、キミ、キミ」

         

        誰かが退屈な人の肩を叩きました。

         

        声のした方を向くと、そこにはお巡りさんがいました。

         

        気付けば二人のお巡りさんに囲まれています。

         

        「何しているんだい?」

         

        お巡りさんに質問された退屈な人は、

         

        (怪しい行動ばかりしてたから、

         お巡りさんに目をつけられちゃったのかな?

         でも、ちょうどいいや)

         

        と、思い言いました。

         

        「お巡りさん、ベンチの下から、お金拾いました」

         

        律儀な退屈な人は、100円玉をお巡りさんに手渡しました。

         

        お巡りさんは100円玉を受け取ると、

         

        「それはご苦労様です」

         

        と言いながら、ポケットから財布を出し中から

        100円玉を出して手渡してくれました。

         

        そして、お巡りさんは一言二言注意を言って

        去っていきました。

         

        退屈な人は、フーゥ、と息を吐いてから、

        手渡された100円玉を手に乗せて、ポケットの中から、

        自販機から出たおつりの10円玉を出して並べました。

         

        (本当に呼んで来るんだな)

         

        退屈な人は手のひらを閉じて握りしめると、

        先ほど買った飲み物を開けて一気に飲みほしました。

         

        そして、手のひらに110円を握りしめながら、

        近くのコンビニに入っていきました。

         

        手にしたお金はすぐに手放す主義の退屈な人に、

        本当のお金の縁が巡ってくるのはまだ先のようです。

         

         

        おしまい

         

        UGEMテーマ:小説全般

         

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