douwadehappy

童話でHappy♪

ハッピーエンドの童話たちが あなたの気分をHappy♪にしちゃいます
週2回(水・土辺りに)更新します

雪だるま
0
    スポンサーサイト

    一定期間更新がないため広告を表示しています

    | - | - | - |
    雪だるま
    0
      オオカミからにげる方法(世界の昔話より)

      「あ、キツネさんこんにちは」

       

      ネコは森の中でお散歩している時に、

      キツネを見かけたので声をかけました。

       

      「やぁ、ネコさんこんにちは」

       

      キツネはすました声でネコに答えました。

       

      「今日も、いい天気ですねぇ」

       

      ネコは頭が良くていろいろ教えてくれるキツネが大好きでした。

       

      「そうだね、いい天気だね」

       

      そうキツネが答えると、

       

      「ちょうど良かった、キツネさんに聞きたいことがあったのです」

       

      「おや、なんでしょう、ボクで良ければなんでも答えますよ」

       

      キツネが優しい表情で言ったので、ネコはニコニコ笑顔で質問しました。

       

      「私は、オオカミからにげる方法をこないだ1つだけ見つけたんです。

       キツネさんなら、いろいろ知っているから、私の方法が正しいかどうか

       教えて欲しいんです」

       

      「ほう、オオカミからにげる方法ですかぁ、それは興味深い。

       ネコさんの考えた方法を教えていただけますか」

       

      「ハイ」

       

      と、ネコは笑顔で答えてから、

       

      「オオカミに追いかけられたら、こうするんです」

       

      ネコは身をひるがえして、近くにあった木に近づき、

      サササッ、とあっという間にかけ上がりました。

       

      そして、枝の上から自信満々でキツネに言いました。

       

      「どうです!」

       

      「ほう、それはそれは、確かに、オオカミは木登りができませんから、

       素晴しいと思います」

       

      キツネは感心した口調で言いました。

       

      「キツネさんからそう言われると、うれしいです!」

       

      木から降りて来たネコは、少して照れた笑みをうかべながら、

       

      「ところでキツネさんは、オオカミからにげる方法を

       他にご存知じゃないですか?」

       

      「オオカミからにげる方法かぁ」

       

      と、キツネは少し考えてから、

       

      10個くらいはあるかなぁ〜」

       

      10個も! スゴイ!」

       

      さすがはキツネさん! とネコは尊敬の眼差しをキツネに向けました。

       

      「良かったら、何個か教えて下さい!」

       

      と、ネコが手を合わせてお願いすると、

       

      「しょうがないなぁ」

       

      と、キツネはちょっと、はにかんでから話を始めました。

       

      「まず、1つ目は──」

       

      その時、キツネの後ろの草むらが、ザワザワ、と動きました。

       

      ネコからは草の動きが良く見えましたが、

      背中を向けているキツネは気付いていませんでした。

       

      ネコはキツネの話を聞きながら、意識は草むらに集中しました。

       

      すると、

       

      “ザッ、”

       

      という音とともに、数匹のオオカミが顔を出しました。

       

      「キツネさん、オオカミだ!」

       

      ネコは、すぐさまオオカミからにげる方法を使いました。

       

      身をひるがえして、先ほどと同じように、一気に木を登り、

      枝にしゃがみました。

       

      下を見ると、キツネがオオカミに囲まれて、

      身動きが取れない状態になっていました。

       

      (キツネさん、今こそ、オオカミからにげる方法を使わなきゃ)

       

      ネコは思いました。

       

      しかし、キツネは体を丸くして、

      オオカミから身を守ることしかできません。

       

      (あ、分かった、キツネさん、オオカミからにげる方法が

       10個もあるもんだから、どれにしようか迷ってる間に、

       囲まれちゃって、手だしできないんだ!)

       

      ネコはそう判断しました。

       

      そして、どうにかしてキツネを助けようと、思いました。

       

      (オオカミの気を他に向ければ、キツネさんは少し自由になれるから、

       そしたらにげる方法を使って助けてくれるはず)

       

      ネコはそう思い、一匹のオオカミめがけて木の上から飛びかかりました。

       

      「ニャー!!!!

       

      ネコは見事に、一匹のオオカミにぶつかりたおしました。

       

      不意をつかれた他のオオカミは、きょとんとしています。

       

      「キツネさん、今のうちに、にげて!」

       

      ネコがさけぶと、キツネはすぐさま立ち上がり、

      勢いよく走り出しました。

       

      (キツネさん、早く、にげる方法を)

       

      とネコは思いましたが、キツネはみるみるはなれて行き、

      すぐに姿が見えなくなってしまいました。

       

      (あ、あれ、キツネさん?)

       

      ネコはキツネがにげて行った方を見ていましたが、

       

      「やい、痛いじゃないか!」

       

      と言われて、ハッ、とオオカミの方に目を向けました。

       

      気付けばオオカミに周りを囲まれてしまいました。

       

      「どういうつもりか知らねぇが、ただじゃおかないからな!」

       

      と、ネコに体当たりされたオオカミが言いました。

       

      「いや、オオカミさん、今日も、いい天気ですねぇ……」

       

      ネコは必死に愛想笑いをうかべてそう言いましたが、

      それが通じる相手ではありません。

       

      オオカミは怖い顔をして、ネコにおそいかりました。

       

      ネコはおそいかるオオカミを間一髪で交わして、

      サササッ、と走り、木を登りました。

       

      木の枝から下をみると、オオカミたちが木の下で、

      ぴょんぴょんはねたり、木に前足をかけたりしていました。

       

      「ひきょうだぞ! 降りてこい!」

       

      とさけぶオオカミに、

       

      「ひきょうもなにも、私1匹にそんな大勢で、どっちがひきょうだよ」

       

      とネコは言い返しました。

       

      「うるさい、つべこべ言わずに、降りてこい!」

       

      とオオカミは叫んでいます。

       

      ネコは枝の上で座り、オオカミたちを見ました。

       

      (オオカミは木には登って来られないはずだから)

       

      と、思いましたが、とても落ち着きません。

       

      (キツネさんもいい方法だ、って、言ったくれたんだし大丈夫)

       

      ネコはふるえながらもそう考えて、

      枝の上で身を丸くしてオオカミの様子をうかがいました。

       

      やがてオオカミたちは、知恵を使いはじめました。

       

      一匹が木に前足をかけ、その上に一匹のオオカミが乗り、

      木にしがみつきました。

       

      そして、次の一匹がまたその上に乗り、

      木を登っていこうとしているのです。

       

      何度か失敗しましたが、段々と、ネコに近づいて来ています。

       

      ネコは枝の場所を変えようかと思いましたが、体がすくんで動けません。

       

      オオカミたちは段々、木に登ることになれてきて、

      とうとう、ネコのいる枝まで登ってきました。

       

      登って来たのは、ネコに体当たりされたオオカミです。

       

      「苦労かけやがって、覚悟しろ!」

       

      と、オオカミはネコに、ジリ、ジリ、っと近づいてきました。

       

      ネコは、ブルブルとふるえながら、後ずさりしました。

       

      しかし、すぐに枝のはしまできてしましました。

       

      (このままでは、おそわれる、どうしよう)

       

      と思ったネコは、とっさに、体を動かしました。

       

      ヒョイ、っと飛び上ると、近づいて来たオオカミにを飛びこえ、

      木にしがみついているオオカミたちの上を走り、木の下に降りて、

      一目散ににげだしたのです。

       

      「待て!」

       

      オオカミたちもすぐに木から降りて、ネコを追いかけました。

       

      走りだしたら、オオカミの方がずっと速いので、

      あっという間に、ネコは追いつかれてしまいました。

       

      「たく、往生際が悪いぜ」

       

      オオカミが言いました。

       

      ネコは、周りをオオカミに囲まれてしまい、

      おびえながらも、身を小さくして構えました。

       

      オオカミたちが、ゆっくりとネコに近づいてきます。

       

      (もうだめだー)

       

      とネコは思いました。

       

      「フフフフフッ、」

       

      不敵な笑みをうかべながら、オオカミがジリジリと近づいてきて、

      飛びかかろうとしました。

       

      ネコは頭をかがめ、目を、ギュッ、と閉じました。

       

      と、その時です。

       

      「コラー!!!!!

       

      という声が聞こえました。

       

      目を向けると、全力で走ってくるキツネの姿が見えました。

       

      「キツネさん!」

       

      ネコは声を上げました。

       

      走り寄ってくるキツネの後ろには、

      なん匹ものキツネが連なって走って来ます。

       

      “ドドドドドドドドドッ!!!!!”

       

      そのキツネの多さを見て、さすがのオオカミたちも、

       

      「やべぇ」

       

      と、身をひるがえしてにげ出しました。

       

      キツネの大群は、オオカミを追いかけました。

       

      先頭を走っていたキツネは、ネコの姿を見ると、近づいてきました。

       

      「助けが遅くなってごめんよ」

       

      「キツネさーん!」

       

      ネコは泣きだしました。

       

      「仲間を呼ぶのにちょっと手間取ってしまって」

       

      やがて、オオカミを追うのをやめた大勢のキツネたちが、

      ネコの周りに集まってきました。

       

      「これが、ボクのオオカミからにげる1つの方法かな」

       

      と、キツネは少し気まずそうに言いました。

       

      ネコは、涙を流しながら言いました。

       

      「さすがですキツネさん。私の方法は、結局、うまくいきませんでした」

       

      と、また泣きだしました。

       

      キツネは泣いているネコに、

       

      「ありがとう、君はボクの命の恩人だよ」

       

      と、言い、他のキツネたちも、ウンウン、うなずきました。

       

      それを見て、ネコはまた泣きだしてしました。

       

      そして、キツネたちは泣きじゃくるネコを、

      しばらくの間、優しく見守りましたとさ。

       

       

      おしまい。

       

       

      JUGEMテーマ:創作童話

       

       

      続きを読む >>
      | 怖くてもHappy♪ | comments(0) | - |
      雪だるま
      0
        イルカと白ウサギ[前編](日本昔話より)

        「知らない島に、ぼく一人、どうしよう……」

         

        まだ子どもの白ウサギは、海の向こう側に見える、

        住み慣れた島を見つめて泣いていました。

         

        島にいく為には、海を渡らなければなりません。

         

        白ウサギは子どもだとは言え、

        泳げない訳ではありませんでしたが、

        向う側へちゃんとつくか自信はありませんでした。

         

        いや、泳げる自信があったとしても、

        この状況では、どのみち海を渡ることはできません。

         

        海には、何匹ものサメが泳いでいて、

        白ウサギを海に入れさせまいと、

        水中からにらみを利かせていたからです。

         

        白ウサギは体をぶるぶる震わせながら、

        サメを怒らせてしまったことを後悔していました。

         

         

        ───少し前の出来事です。

         

        子どもの白ウサギは、向う側の島に住んでいて、

        生まれたころからずっと、島のあちこちを

        元気に走り回って遊んでいました。

         

        ところが最近、白ウサギは島で遊ぶことに、

        たいくつを感じるようになってしまいました。

         

        もう島で知らない所は無い、遊びつくした!

        と、思ってしまったからです。

         

        そんなある日、海のそばまで来てみると、向う側に、

        大きそうな島があることに気づきました。

         

        行ってみたいなぁ、と白ウサギは思いましたが、

        海岸から眺めているだけでした。

         

        少し遠いので、泳ぎ切る自信がなかったからです。

         

        白ウサギは、大きな島を見つけてから、

        何度も海のそばまでやってきました。

         

        海のそばで島を見つめては、行ってみたい、

        と強く思うようになりました。

         

        そして、この日も、

        海のそばまでやって来て、島を見ていたのです。

         

        「なんかいい方法はないかなぁ」

         

        と思いながら海を見ていると、

        一匹のサメが泳いでいるのが見えました。

         

        「サメさんが背中に乗せてくれたら、

         あっちまですぐ行けるのになぁ」

         

        白ウサギはそう思いましたが、

        いつも不機嫌そうなサメがそんなことをしてくれるとは、

        とても思いません。

         

        親からも、いばり屋で見栄っ張りなサメには拘わるな、

        と強く言われていました。

         

        白ウサギは泳いでいるサメを、ぼーっと眺めていました。

         

        「あ!」

         

        白ウサギは、いいことを思いつきました。

         

        そして、考えを巡らせてまとめると、大きく頷きました。

         

        「いける!」

         

        そう言うと、海岸のぎりぎりまで歩いて行きました。

         

        そして身をかがめて、泳いでいるサメに声をかけました。

         

        「サメさん、サメさん」

         

        白ウサギが呼ぶと、海の中から、

         

        「なんだい、坊主、なんかようかい?」

         

        機嫌が悪そうな表情をしたサメが近寄って来ました。

         

        「いやぁ、あの、」

         

        白ウサギはサメの表情を見て一瞬ひるみましたが、

        勇気を持って言ってみました。

         

        「サメさんには、お友だちが大勢いますよね」

         

        「あ? 友だち? っていうか仲間ならいっぱいいるなぁ」

         

        「いっぱいですか。でも、サメさんの仲間の数なんて、

         きっとボクの友だちの数に比べたら、比べ物にならないほど、

         少ないと思うんだけどなぁ」

         

        白ウサギはワザと馬鹿にしたような口調で言いました。

         

        「あーん?」

         

        サメは、さらに怖い表情になってから、

         

        「おまえの仲間の方が多いだと?」

         

        「ハイ」

         

        自信満々に言う白ウサギにサメは、

         

        「ふざけんな、オレの仲間の方が多いにきまってる!」

         

        白ウサギは、サメのその言葉で、シメタ、と心の中で思いました。

         

        見栄っ張りのサメはバカにされたら、きっと

        自分の方が多い、と言うと思っていたからです。

         

        そして白ウサギは考えていた台詞を言いました。

         

        「それじゃぁサメさん、仲間を呼んであの島に向かって、

         一列に並んでください。私が数えますから」

         

        「分かった、オレの方が多いことを証明してやる」

         

        と言ってからしばらくして、サメは仲間を集めて、

        島に向かって一列に並ばせました。

         

        「さぁ、数えてみろ!」

         

        サメがそういうので、ウサギは「数えるよ」と言って、

        軽やかにサメの頭に乗りました。

         

        「1ぴき、2ひき、3びき……」

         

        ウサギはサメの頭の上をぴょんぴょんと飛んでいき、

        ついに、海の向こうの島までたどり着きました。

         

        「13びきだ! スゴイねサメさん!」

         

        白ウサギは島から、サメに言うと、

         

        「そうだろう」

         

        と、サメは自慢げな表情を見せてから、

         

        「じゃぁ、今度はおまえの仲間の数をオレに数えさせろ」

         

        そう言われて、ウサギはお茶らけた表情で言いました。

         

        「へへへーん、冗談でした! ボクは始めから、

         こっちの島に渡りたくて、サメさんの頭を使わせてもったんだよー!」

         

        白ウサギはまだ子どもだったので、

        冗談だったと、言えば許してもらえると思っていたのです。

         

        しかし、相手は気難しいサメです。

         

        お茶らけている白ウサギに向かって、

         

        「なんだコラー!!

         

        と、大きな声を上げました。

         

        白ウサギはビックリしました。

         

        サメは、怖い顔で言いました。

         

        「フン、小僧、オレをだましてタダで済むとは思ってないだろうなぁ」

         

        「いや、だましたなんて、ゴメンナサイ、ほんの冗談です、冗談」

         

        「あやまっても冗談でも、オレを小バカにしたことは同じだ!」

         

        サメの低い叫び声を聞いて、

        白ウサギは、唾をゴクリと飲みました。

         

        サメは、白ウサギをしばらくにらんだあと、ニターっと笑いました。

         

        「ところで小僧、そこから元いた島に戻る方法は考えているのか?」

         

        白ウサギは“ハッ!”となりました。

         

        帰ることまでは考えていなかったのです。

         

        その表情を見てサメは言いました。

         

        「フフフ、もうお前にオレたちの頭はかさねえぜ、

         しかも、泳いでも渡らせない、おまえが飛び込んだら、

         ひとのみしてやる。

         そのために、ずっとこの海を仲間と一緒に

         泳いで見守ってやるからありがたく思え」

         

        フフフフフフ、とサメたちが、イヤな笑いを浮かべました。

         

        「え、えぇぇぇ……」

         

        白ウサギは、サメに拘わるな、という親の言っている意味が

        やっと分かりました。

         

        「毛皮をはぎ取られなかっただけ、ありがたく思いな! 

         オレはなんて、優しいんだろうな」

         

        そうサメは言い残して、海の中を悠々と泳ぎました。

         

        ときおり海から顔を出すサメにおびえながら。

         

        「ど、どうしよう……」

         

        白ウサギは、ぶるぶると震えて、

        しゃがみ込みこんでしまいました。

         

         

        ───つづく、

         

         

        JUGEMテーマ:悩み

         

        | 怖くてもHappy♪ | comments(0) | - |
        雪だるま
        0
          イルカと白ウサギ[中編](日本昔話より)

          [前編]はこちらからどうぞ

           

           

          「どうしよう、帰れないよ〜」

           

          まだ子どもの白ウサギは、何匹ものサメが泳いでいる海を眺めて

          ぶるぶると震えていました。

           

          サメはときおり水から顔を出して、白ウサギを眺めて、

           

          「いつ飛び込んでもいいんだぜ」

           

          と、不敵な笑みを浮かべています。

           

          白ウサギは怖くてぶるぶる震えながら落ち着きなく、

          海を泳いでいるサメを見たり、元々いた島を見たりしました。

           

          しかし、どうにもならなそうです。


          しかたなく白ウサギは振り向きました。

           

          島には緑に覆われた少し小高い丘がありました。

           

          白ウサギは、もう一度、サメのいる海を眺めてから、きびすを返すと、

          サメのいる海から離れ、丘に向かって歩き出しました。

           

          丘に生えている草木の背は低いので、

          震えて足取りのおぼつかない白ウサギでも歩くことができました。

           

          そしてなんとか丘の頂上までやってきました。

           

          すると、目の前に一面の青い色が飛び込んできました。

           

          「うわぁー」

           

          丘を緩やかに下っていった先の海岸から、真っ青な海がずーっと、先、

          どこまでもどこまでも続いていき、やがて空とくっついています。

           

          「こんな海、見たことないや〜」

           

          今まで白ウサギの見ていた海は、すぐ向う側に島がある、

          とても狭い景色でした。

           

          その狭い海をサメの背中に乗って渡り島にたどり着き、

          丘を登り目にしたものは、果てしなく広がる海の景色でした。

           

          白ウサギは、海の広さに圧倒され、ゆっくりと首を左から右、

          右から左へと動かし、ボーっと眺めていました。

           

          「あっ、のんびりしている場合じゃなかった! なんとかしなきゃ」

           

          白ウサギはとりあえず丘を下りて海岸に近づきました。

           

          そして、どこまでも続く青い海をゆっくりと眺めながら、

          この島から出るいい方法は無いかとを考えました。

           

          しかし、なにもいい方法が浮かびませんでした。

           

          途方にくれながら、ぼんやりと海を眺めていると、

          海面になにかが見えたような気がしました。

           

          白ウサギは目をこらすと、海面でなにかが動いています。

           

          背びれです。

           

          「あ、サメだ!」

           

          白ウサギはドキリとなり、寒気が全身を覆いました。

           

          しかし、次の瞬間、背びれは上に上がっていき、

          同時に丸っこいものが上って来たと思うと、

           

          プシュー、

           

          っと、水を吐き出して、また、

          海の中へ入っていきました。

           

          「ん?」

           

          白ウサギは首をかしげました。

           

          (サメ、ってあんな感じだっけ?)

           

          白ウサギがずっと見ていると、また背びれが現れました。

           

          そして、また、プシュー、と水を吐き出して潜っていきました。

           

          しばらくすると、また背びれが見えました。

           

          今度は、プシュー、とはせずに、だんだん白ウサギに近づいてきました。

           

          白ウサギはちょっと怖い感じもしましたが、

          ジッと前足を揃えてお座りをした姿勢で、

          背びれの動きを目で追っていました。

           

          すると、

           

          バサーッ、

           

          と、白ウサギの前でそいつは顔を出しました。

           

          そして、白ウサギと目が合うと同時に、

           

          「うわぁっ、ビックリした!」

           

          と、海から顔を出したやつは驚きの声を上げました。

           

          海から顔を突然出して、勝手に驚きの声を上げたあと、

          そいつは矢継ぎ早に白ウサギに質問あびせてきました。

           

          「誰だい、君は? なんでそんなところにいるんだい? 

           それより、なんでそんなに白いんだい?」

           

          あっけに取られている白ウサギは、ぼそっと、

           

          「ボクは白ウサギ、君は?」

           

          「ボクはイルカだよ、知らないの?」

           

          「うん」

           

          「海の人気者、イルカだよ!」

           

          「知らなーい」

           

          白ウサギは冷たく言うと、イルカはシュンと力なく海に顔を沈めました。

           

          それからイルカは、くるっと、海の中を泳いで、

          白ウサギの前に顔を出しました。

           

          「ところで、君、見かけない顔だけど、こんなところでなにしてるの?」

           

          と、質問好きなイルカに、白ウサギは

          前足を揃えてお座りをした姿勢で言いました。

           

          「あなた、イイ奴?」

           

          「えっ」

           

          イルカは目をまん丸にした表情で、

           

          「イルカは、イイ奴に決まってるよ」

           

          「そうなの?」

           

          「そうなの、って、白ウサギさん、君はおもしろいね」

           

          そう言ってイルカは、クケケケケケケ、と笑いました。

           

          イルカが楽しそうに笑っている姿を見て、

          白ウサギは少し安心しました。

           

          そして、

           

          「帰れなくなっちゃったの。話し聞いてくれる?」

           

          と、肩を落としながら言いました。

           

          「うん、きくきく」

           

          と、イルカは何度もうなずきました。

           

          白ウサギはどうしてこの場所にいるか訳を話しました。

           

          話を聞き終えたイルカは軽い口調で言いました。

           

          「そうか分かった、じゃぁ、ボクが向うの島に連れてってあげるよ」

           

          「えっ、でもサメいるよ」

           

          「大丈夫だよ、ボクの泳ぎの速さに、サメなんてついて来れないよ」

           

          と言ったあと、イルカは、見てて、と言って右へ泳ぎ、すぐにターンして

          左へ行き、しばらくしてまたターンして、白ウサギの前まで来ると、

          ピューン! とジャンプしました。

           

          “バシャーン!!”

           

          イルカが海に入ると、水しぶきが上ったので、

          白ウサギは慌てて逃げました。

           

          「どう、すごいでしょ!」

           

          と、得意げに話すイルカに、

          白ウサギは、スゴイのかどうか良く分からなかったのですが、

           

          「うん、スゴイと思う」

           

          と、返事をしました。

           

          イルカは嬉しそうに、体の半分くらいを海から出して、

           

          「クケケケケケケ」

           

          高らかに笑い声を上げました。

           

          あっけに取られている白ウサギにイルカは、

           

          「じゃ、ボクの背中に乗って!」

           

          と、体を海岸に対して横を向けて、白ウサギが乗りやすいように

          背中を向けました。

           

          白ウサギは、

           

          (ほんとうに大丈夫かなぁ……)

           

          と、ちょっと不安もありましたが、それよりも、

          イルカの背中に乗ってみたら楽しそう、との思いが強く、

           

          「じゃ、乗るよ」

           

          ピョン、と軽やかにジャンプしてイルカの背中に乗りました。

           

          「背びれにつかまって」

           

          イルカがそう言うので、白ウサギは背びれにさわりました。

           

          イルカの背びれは、ヌルっとした感触で、

          すべりそうだったので、抱きしめることにました。

           

          「じゃっ、しゅっぱーつ!!

           

          イルカは物凄い勢いで泳ぎ始めました。

           

          白ウサギはバランスをとるので精一杯、振り落とされないように、

          必死に背びれにしがみつきました。

           

          「ヤッホー!」

           

          イルカは激しくカーブを曲がります。

           

          白ウサギは激しく上がった水しぶきをもろにあび、

          しょっぱい海の水を飲み込んでしまいました。

           

          イルカはそんなことにもお構いなしに、

          スピードを上げて泳いでいます。

           

          そのうち、白ウサギも段々イルカのスピードになれて来て、

          周りを見る余裕が出てきました。

           

          水しぶきを巻き上げながら、海の上をすべるように移動しています。

           

          塩っ辛い水しぶきは全身に浴びせられていましたが、

          同時に、気持ちのいい風を全身に浴び、白い毛も激しく揺れ、

          とても爽快な気分になってきました。

           

          「イルカさん、サイコー!」

           

          「イエーイ!」

           

          イルカもおおはしゃぎです。

           

          そうこうしていると、白ウサギが元々住んでいた島が

          前方に見えてきました。

           

          このまま行ったら、あっという間に島にたどり着きそうです。

           

          (よかった、帰れる!)

           

          そう、白ウサギは思いました。

           

          と、その時です、

           

          「コラーッ、どこ行くんだ!」

           

          と、右かわから激しくサメがイルカめがけて突進してきました。

           

          白ウサギは、ギョ、としましたが、

           

          「おっと危ない!」

           

          イルカは華麗に身を翻し、サメの突進をかわしました。

           

          すると今度は左側から別のサメが襲い掛かって来ました。

           

          「うわわ、」

           

          イルカは間一髪かわすと、スピードを上げて泳ぎました。

           

          かわされたサメたちは、イルカを追いかけてきますが、

          イルカはどんどん差を広げていきます。

           

          「スゴイよ、イルカさん!」

           

          「でしょ!」

           

          イルカは得意げに言ったその時、

          目の前から二匹のサメが同時に襲ってきました。

           

          慌てて、別の方向を向いてかわそうとしましたが、

          向いた方向にはまたサメがいました。

           

          イルカはさらに方向を変えましたが、そちらにもサメがいます。

           

          気付くと、どちらも向いてもサメがいて、ゆうゆうと泳いでいました。

           

          白ウサギを乗せたイルカは、いつの間にかに

          サメたちにすっかり囲まれてしまいました。

           

          イルカは、大きな声を上げました。

           

          「ヒュルルルルルルルルル」

           

          「どうしよう、イルカさん」

           

          白ウサギは、イルカの背びれにしがみつき、

          ぶるぶると震えました。

           

           

          ───つづく

           

           

          JUGEMテーマ:創作童話

          | 怖くてもHappy♪ | comments(0) | - |
          雪だるま
          0
            イルカと白ウサギ[後編](日本昔話より)

            [中編]はこちらからどうぞ

             

             

            「ヒュルルルルルルルルル」

             

            イルカは大きな声を上げて、サメを威嚇しました。

             

            しかし、サメたちはまったく動じず、イルカの周りを泳いでいます。

             

            子どもの白ウサギは、イルカの背中でぶるぶると震えています。

             

            「フフフフ、イルカに乗って逃げるとは、考えたなボウズ」

             

            と白ウサギに騙されたサメが、近づいてきて言いました。

             

            「近寄るな!」

             

            と、イルカが叫びました。

             

            サメは少し近づいて、白ウサギを睨みながら周りを泳いでいます。

             

            白ウサギは体を震わせながら、考えていました。

             

            (このままでは、食べられてしまう、イルカさんもボクも……)

             

            「どうしたボウズ、怖くてなにも言えねぇか」

             

            白ウサギに騙されたサメが、ギョロリと白ウサギに目を向けて、

            鋭い歯をむき出しながら笑っています。

             

            「近寄るな、って言ってるだろ!」

             

            とイルカは叫びながら、なるべくサメから離れるように

            泳いでいます。

             

            しかし、周りはサメに囲まれているので、

            スピードを上げて、自由に泳ぐことはできません。

             

            白ウサギは、イルカの背びれにしがみついて、

            目をギュッとつむりました。

             

            (ボクが悪いんだ、ボクがサメさんをだまして、

             イルカさんまで巻き込んで、全部、ボクが悪いんだ、

             全部……)

             

            白ウサギは目を見開きました。

             

            そして、体を震わしながらも、サメに向かって大声で叫びました。

             

            「サメさん、ゴメンナサイ、悪いのは全部ボクです。

             イルカさんは関係ありません。イルカさんを逃がしてください」

             

            サメは不敵な笑みを浮かべて。

             

            「おっと、そうとも」

             

            と同意してみせてから、イルカに向かって言いました。

             

            「イルカの小僧、おまえには関係ない話だ、

             その背中にいるうすぎたねぇウサギを、

             今すぐ海の中へ突き落せ、そしたら見逃してやる」

             

            イルカはすぐに言い返しました。

             

            「冗談じゃないよ、友だちを裏切る訳にはいかないね」

             

            「おうおう、泣かせるじゃねぇか、

             なぁ、おまえらもそう思うだろう」

             

            騙されたサメは、他のサメたちに同意を求めました。

             

            それに応えるように、サメたちは不敵な笑いを巻き起こしました。

             

            騙されたサメは、今度は白ウサギに話しかけます。

             

            「ボウズ、どうする、イルカはおまえを見放さないとよ、

             それだったら、一緒に始末するしかねぇなぁ」

             

            白ウサギは、唾をゴクリと飲みました。

             

            サメはさらに続けます。

             

            「それとも、ボウズ、おまえがその手を放して、

             海に飛び込めば、状況は変わるかもしれないぜぇ」

             

            白ウサギは、目を見開きサメを見ました。

             

            サメは不敵な表情で見ています。

             

            白ウサギは思いました。

             

            (そうだ、ボクが飛び込めば、イルカさんは助かるんだ)

             

            「ダメだ!」

             

            イルカが大きな声を上げました。

             

            「ダメだウサギさん、飛び込んじゃダメだ!」

             

            その声は白ウサギにもちゃんと聞こえました。

             

            しかし、イルカを助けたいとの思いが

            白ウサギの頭に中にはありました。

             

            (全部、ボクが悪いんだ、考えなしにサメさんをだまして、

             考えなしにイルカさんを巻き込んで……)

             

            「ダメだウサギさん、ボクがなんとかするから、

             そこにいて、ボクの背びれを離さないで!」

             

            「ありがとうイルカさん、ほんのちょっとだったけど、

             君の背中に乗って、海を泳げてとても楽しかったよ」

             

            「うん、ボクも楽しかった。だからまた一緒に遊ぼうよ」

             

            「───うん、また、遊ぼうね」

             

            と、白ウサギは静かに言ったあと、

            背びれを掴んでいた手の力を抜きました。

             

            「イルカくん、ありがとう」

             

            白ウサギは海の中へ飛び込みました。

             

            「ウサギさーん!!!

             

            イルカが大きな声を上げました。

             

            サメは、ニターっと歯をむき出しにして、

            下品な表情で笑いました。

             

            そして、ゆっくりと白ウサギの飛び込んだ方向へ

            泳いでいきました。

             

            泳ぎながらサメは、ふと、周囲の異変に気付きました。

             

            イルカを囲んでいたサメたちが何かソワソワ慌てています。

             

            「どうした?」

             

            サメが問いかけても、反応もなく、一匹、二匹と、

            次々と逃げて行くように泳いで行ってしまいます。

             

            サメは慌てました。

             

            その一瞬見せたサメのすきを見逃さずに、イルカはすぐさま体を翻し、

            白ウサギの方へ潜っていき、浮いている白ウサギを口にくわえました。

             

            「このやろう! かってなことを!」

             

            サメはイルカにおそいかかろうとしました。

             

            その時です。

             

            イルカにおそいかかろうとしていたサメに、

            激しくなにかがぶつかりました。

             

            始めは右から、すぐに左から、そして右、次に左から、

            何回も何回もぶつけられ、サメは耐えきれず、

            フラフラになりながら、とうとうその場を去っていきました。

             

             

            ──────。

             

            白ウサギは真っ白いお日様の光で目を覚ましました。

             

            「ここは天国かなぁ?」

             

            なんて、とぼけたことを言うと、

             

            「あ、気づいた! みんなー気づいたよ!!

             

            という声が聞こえました。

             

            白ウサギは立ち上がって、周りを眺めました。

             

            すると、たくさんのイルカが自分の方を見ていました。

             

            「ウサギさん、気づいてよかった」

             

            声の方に目を向けると、島で出合ったイルカの顔が

            背びれ越しに見えました。

             

            イルカの背中に乗っていることに白ウサギは気付きました。

             

            イルカは言いました。

             

            「みんなが助けに来てくれたんだよ」

             

            イルカたちは、サメを威嚇する為に上げた大きな声を聞いて、

            助けにやって来たのです。

             

            白ウサギは、周りを見渡しました。

             

            数えきれないくらいのイルカが、

            白ウサギを、興味深々、といった表情で見つめていました。

             

            そんなイルカたちの無邪気な表情を見て、

            白ウサギは涙をぽろぽろとこぼしながら言いました。

             

            「みなさん、ありがとう……、ありがとう」

             

            すると、一頭のイルカが言いました。

             

            「オレたちイルカはサメと違って、仲間は助ける!

             これが当たりまえさっ!」

             

            そうだ! そうだ! と周りから声が上がりました。

             

            白ウサギは涙を流しながら言いました。

             

            「でも、ボクは、みなさんの大切な仲間のイルカさんを巻き込んで、

             危ないめに合わせて、ボクは、ボクはひどい奴です」

             

            そう言ってうなだれる白ウサギに、一頭のイルカが近寄って来て、

            優しい表情で言いました。

             

            「いいえ、あなたは決して、ひどい奴なんかではありません。

             聞きましたよ」

             

            「へ?」

             

            白ウサギは近寄って来たイルカを見つめました。

             

            イルカは包み込むようなまなざしで、白ウサギに言いました。

             

            「自分が海に飛び込むことで、私の息子を、

             サメから助けようとしてくれたそうですね」

             

            白ウサギは、ポカンと、イルカの言葉を聞いていました。

             

            「白ウサギさん、息子を守ってくれて、ありがとう」

             

            そんな言葉を投げかけられ、白ウサギは、

            いろんな感情と、安心したのが、ごちゃ混ぜになってしまい、

            イルカの背中の上で、大勢のイルカに見守られながら、

            大きな声を上げて、ぼろぼろと涙を流して、おもいっきり泣き続けました。

             

             

            おしまい。

             

             

            JUGEMテーマ:失敗は成功へのプロセス

            | 怖くてもHappy♪ | comments(0) | - |
            雪だるま
            0
              毛むくじゃらに追われたひな鳥(世界の昔話より)

              生まれたばかりのひな鳥が、ピヨピヨと鳴きながら歩いていました。

               

              ひな鳥が一羽で歩いているなんて、とても危ないことです。

               

              ピヨピヨ歩いていると、目の前に、

              なんだか毛むくじゃらなものが見えました。

               

              ひな鳥は顔を上げていくと、

              ずっと毛むくじゃらが上の方へと続いています。

               

              そして、行き着いた先には顔がありました。

               

              「ニャー!」

               

              その顔は、恐ろしい顔が声を上げました。

               

              (『ニャー』と鳴く大きな毛むくじゃらにあったら、

               すぐに逃げるのよ)

               

              と、母鳥に言われたことをひな鳥は思いだしました。

               

              (やばい! 逃げなきゃ!)

               

              ひな鳥は一目散に逃げだしました。

               

              すると、毛むくじゃらも追いかけてきます。

               

              ひな鳥はまだ上手く飛べません、バタバタと羽を激しく動かして

              少し飛んで、ちょこちょこ走り、またバタバタと羽を動かして

              少し飛んではちょこちょこ走る、をくりかえしながら必死に

              逃げました。

               

              毛むくじゃらも逃がしてなるものかと、前足で捕まえようとしますが、

              ひな鳥は、ちょこまかちょこまかと巧みなステップで逃げるので、

              捕まえることができません。

               

              必死に逃げているひな鳥の行く手には壁があり、

              そこには小さな穴が開いていました。

               

              ひな鳥がここへやって来たときに通った穴です。

               

              壁の向うにはひな鳥の家があり、母鳥もいます。

               

              あの穴の大きさなら、毛むくじゃらは通れないはずです。

               

              ひな鳥は羽をバタバタさせて、少し飛んではちょこちょこ

              穴に向かって走りました。

               

              ひな鳥の頭の上を、毛むくじゃらの足が、

              “ビュンビュン”と音を立てて、何回も何回もかすめました。

               

              ひな鳥は何も考えずに、ただ、穴に向かって一目散に走りました。

               

              穴はすぐそこです。

               

              ひな鳥は最後の力を振り絞って壁の穴に飛び込みました。

               

              穴をすり抜けたのと同時にひな鳥は、なにか激しい衝撃を背中に受け、

              前のめりに転んでしまいました。

               

              どうやら毛むくじゃらの足が穴の中に入って来て、

              ひな鳥にあたったようでした。

               

              (いててててて)

               

              ひな鳥は痛みを感じながら立ちあがり、後ろを見ました。

               

              先程通った壁の穴から、毛むくじゃらの足だけが出ていて、

              右へ左へと激しく動いていました。

               

              どうやら毛むくじゃらは、足しか穴に入れられないようです。

               

              「ふーぅ」

               

              ひな鳥は、とりあえず逃げ切れて安心したように息をつきました。

               

              すると、

               

              「もう、どこへ行っていたの!!」

               

              という母鳥の声が聞こえてきました。

               

              「姿が見えないから、心配したでしょ!!」

               

              もう、カンカンに怒っているようでした。

               

              ひな鳥は、謝るよりも先に、

               

              「ママ! 毛むくじゃらにあったよ!」

               

              というと、母鳥は全身の羽を逆立たせて、

               

              「なんですって!」

               

              と、大きな声を上げました。

               

              しかし、ハッとした顔になって、すぐに身をかがめて、

              小さな声でひな鳥に言いました。

               

              「それで、毛むくじゃらはどこへ行ったの?」

               

              ひな鳥は穴の方を指さして、

               

              「あそこ」

               

              と言いましたが、もうそこには毛むくじゃらの足は

              ありませんでした。

               

              「アレ? いない」

               

              不思議がっているひな鳥に、母鳥は小声で言いました。

               

              「あの穴まで来ていたってことは、ぐるりと回り道をして、

               すぐにこちら側にやってくるわ、こうしちゃいられないわよ」

               

              と言ったあと「こちらに来なさい」と母鳥が言うので、

              ひな鳥はついて行きました。

               

              少し歩くと、母鳥は背の高い大きな赤いツボの前で立ち止まりました。

               

              そしてツボを見上げながら言いました。

               

              「ここに入るわよ」

               

              ひな鳥は背の高いツボを見ながら、

               

              (こんなに高く、飛べないよ)

               

              と思い、無理だよ、と言おうとしたとき、

              首の辺りを母鳥に噛みつかれました。

               

              それは母鳥が高いところへ連れてってくれるときにしてくれることと

              同じで、ひな鳥は慣れていました。

               

              ひな鳥を加えた母鳥は大きく羽ばたくと、背の高いツボの入口を目指し、

              高く飛びあがりました。

               

              ひな鳥は、今まで飛んだこともない高さにいるのが珍しくて、

              ウキウキしました。と、同時に、母鳥の力強さに、

              とても安心しました。

               

              母鳥はツボの頂上まで行くと、すぐに中に入り、

              ツボの底に着地しました。

               

              “ゼーェ、ゼーェ”

               

              と、母鳥は羽を上下に揺らしながら苦しそうに息をしていました。

               

              「とにかく、ここでしばらく、静かに、していましょう」

               

              母鳥は苦しそうに途切れ途切れにそう言いました。

               

              それから母鳥とひな鳥はお互いの体を寄せ合いました。

               

              しばらくすると、何やら、足音のようなものが聞えてきます。

               

              ひな鳥は怖くなり、母鳥にしがみつくように体を押し付けました。

               

              母鳥も小刻みに震えているようでした。

               

              ひな鳥が耳を澄ませてみると、毛むくじゃららしき足音は、

              近づいて来たかと思うと遠くなり、また近づいて来ては、

              反対側に行くといった具合に聞えました。

               

              ひな鳥は、ブルブル震えていましたが、極度の緊張からか、

              こんな時に、なんだか“くしゃみ”がしたくなってきました。

               

              ひな鳥は小声で母鳥に言いました。

               

              「ねぇママ、くしゃみしちゃダメかな?」

               

              母鳥は、とんでもない! と言った表情で首を振りました。

               

              ひな鳥はくしゃみを我慢しようと思いました。

               

              しばらく毛むくじゃらの足音を耳を澄まして聞いてみましたが、

              やっぱり、くしゃみがしたくてたまりません。

               

              「ねぇママ、一回だけ、くしゃみしていい?」

               

              母鳥は首を振りながら小さな声で、

               

              「ダメよ、くしゃみなんてしたら、毛むくじゃらに見つかっちゃうわ」

               

              と、言いました。

               

              ひな鳥は、仕方ないなぁ、と思い、もう一回、

              くしゃみを我慢しようと思いました。

               

              くしゃみから気をそらそうと、毛むくじゃらの足音を聞いてみます。

               

              (だいぶ向こう側を歩いているようだな)

               

              ひな鳥はそう思いました。

               

              (それにしても、くしゃみがでそうだな……)

               

              毛むくじゃらの足音が近づいてくるのが分かりました。

               

              (マズイ、こっちに近づいてきてる!

               でも、くしゃみが!)

               

              ひな鳥は必死にくしゃみを我慢しました。

               

              (ダメだ、くしゃみしちゃダメだ)

               

              ひな鳥は両方の羽で鼻を押えました。

               

              (ダメ、ダメ、今くしゃみしたら見つかっちゃう)

               

              足音は、どんどん近づいてきます。

               

              (あぁーぁ、毛むくじゃらが……

               あぁーぁ、くしゃみが……、くしゃみが……)

               

              足音はまさに、ツボのすぐ向う側でとまりました。

               

              (あー、ダメだー!)

               

              「ハぁックショーーーーーーーーーーーンンンンン!!!!!!」

               

              我慢して我慢した挙句に出たひな鳥のくしゃみは、

              それはそれは大きなものでした。

               

              そのくしゃみの衝撃で、なんと、ツボが粉々に割れてしまいました。

               

              「ギニャー」

               

              という悲痛な叫びのような声が聞こえました。

               

              飛び散ったツボの向うに、一目散にその部屋から逃げだしていく

              毛むくじゃらの後ろ姿が見えました。

               

              ひな鳥は、なにが起こったか良く分かりませんでしたが、

              とりあえず今は、くしゃみが出てスッキリとした気分です。

               

              ふと、横を見ると、母鳥が倒れていることに気づきました。

               

              「ママ! ママ!」

               

              ひな鳥が叫ぶと母鳥は目を覚まして、

               

              「もう、大声を出さないで、クラクラする」

               

              と、頭を振りました。

               

              「ママ、毛むくじゃら、逃げて行ったよ!」

               

              ひな鳥がそう言うと母鳥はすぐに我に返り、辺りを見渡して、

               

              「本当だ、いなくなってるね、よかった〜」

               

              と胸をなで下ろしました。

               

              そしてひな鳥の顔を見ながら、

               

              「あなたの大きなくしゃみに助けられたのね」

               

              といって、ひな鳥を抱きしめました。

               

              ひな鳥は、なんだか良く分からなかったけど、

              母鳥の羽に包まれているのが気持ちよくて、

              だんだんと、眠りの世界に入って行きました。

               

               

              おしまい。

               

               

              JUGEMテーマ:創作童話

               

               

               

              続きを読む >>
              | 怖くてもHappy♪ | comments(0) | - |
              PR
              Happy♪を選んでね
              にほんブログ村 小説ブログ 童話・児童小説へ
              にほんブログ村

              最近更新したお話
              RECENT COMMENTS
              アンケート
              PROFILE
              PVアクセスランキング にほんブログ村

              童話でHappy♪のメルマガ登場!!
              メルマガ購読・解除
               

              童話・昔話・おとぎ話の「福娘童話集」

               
              このページの先頭へ