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童話でHappy♪

ハッピーエンドの童話たちが あなたの気分をHappy♪にしちゃいます
週2回(水・土辺りに)更新します

雪だるま
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    雪だるま
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      キツネとツル(イソップ物語より)

      キツネが同じ村に住むツルを食事に誘いました。

       

      キツネはいたずらが大好きです。


      ツルを困らせてやろうと思いつきました。

       

      やって来たツルに座るようにすすめると、テーブルに、薄いオレンジのチェックが入ったお気に入りのランチョンマットをひきました。

       

      「あ、キツネさん、なんだか本格的ですね」

       

      いたずらされるとも知らずに、ツルは驚いてそう言いました。

       

      二コリとだけ笑みを浮かべたキツネは、縁に赤い線の入った真っ白な平らなお皿に、とびっきりおいしいスープをよそり、ランチョンマットの上に置きました。

       

      「さぁ、さぁ、ツルさん、たーんとお食べ」

       

      キツネは満面な笑みを浮かべてそう言いました。

       

      ツルは「うん……」と返事をしましたが、目の前に出されたお皿を眺めて、

       

      (どうしたらいいだろう……)

       

      と悩みました。

       

      ツルのくちばしでは、平らなお皿によそられたスープを飲むのが難しいからです。

       

      キツネは悩んでいるツルを見ながら上機嫌で、自分のスープもよそりました。


      そいて、舌を使って美味しそうに飲み始めました。

       

      ツルには分かっていました。


      いたずら好きなキツネが、自分をからかって楽しいんでいることを。

       

      だから逆に、上手く飲んで驚かせよう、と思いました。

       

      そして、考えたすえ、ツルは行動に出ました。

       

      ツルはテーブルの高さまで首を下げました。


      そしてスープが入っているお皿を“ジーっと”凝視しました。

       

      キツネはツルの行動が気になって、スープを飲むのを止めて見ていました。

       

      ツルはお皿を凝視したまま、くちばしをお皿と水平になる位置につけました。

       

      まっすぐ皿の方へ進め、お皿の縁の赤い線を越えた辺りで、くちばしを少し開き、スープの中に入れていきました。

       

      そしてくちばしを少し持ち上げると、くちばしの下にスープが溜まりました。

       

      それを見て、キツネはごくりと唾を飲み込みました。

       

      ツルの動きが止まりました。

       

      このままゆっくりと首を上に向けてスープを流し込もうか、一気に上に向けてスープを流し込もうか。

       

      どちらにするか考えていたのです。

       

      やがて、ツルは一気に首を上に向けました。

       

      すると、スープが一気に口に入って来てしまい、苦しくなって吐き出してしまいました。

       

      それを見て、キツネを大笑いです。

       

      ツルはあきらめずに、二回目の挑戦!

       

      今度は、ゆっくり首を上に向けました。

       

      スープはゆっくり口の中に入ってくるのですが、くちばしの横から、じょぼじょぼと、こぼれてしまい、少ししか飲めませんでした。

       

      キツネはそれを見て、また大笑いをしています。

       

      ツルはその後、何度も繰り返し、最後の方では結構、上手にスープを飲むことができるようになりました。

       

      キツネは食事が終わるころには、笑うのもやめて、静かにスープを飲んでいました。


      「ごちそうさまでした」

       

      食事が終わり、帰りがけにツルは言いました。

       

      「今日は、おいしい食事をありがとう、今度は私のうちへ遊びに来てくださいな」

       

      キツネはイヤな予感がしましたが「よろこんで!」


      と笑顔で答えました。

       


      数日後……。

       

      今度は、ツルの家にキツネが食事にやって来ました。

       

      ツルはこの前の仕返しをしてやろうと考えました。

       

      そして、細長い首の透きとおるような透明な瓶の中に、たくさんの豆を入れて、キツネの前に出しました。

       

      「どうぞ召し上がれ」

       

      召し上がれ、と言われても、キツネはどうすることもできませんでした。

       

      どうしたって、この細長い首の瓶に、口が入る訳がありません。

       

      ツルは、われ関さず、とばかりに、器用にくちばしを使い豆をポリポリと食べていました。

       

      キツネはツルの仕返しだということに気付きました。

       

      なので、この前、ツルがしたように自分もこれをなんとか食べてやろう、と思いました。

       

      キツネは細い瓶の口を真上から、ガブリ、っと噛みつきました。

       

      器用に豆を食べていたツルは、いきなりのキツネの行動を、目を丸くして見つめました。

       

      キツネは瓶の口を真上から噛みついたまま、しばらく動きませんでしたが、ゆっくり首を天井が見えるくらい真上になるまで上げ、瓶をくわえたまま逆さ向きにしました。

       

      とたんに、たくさんの豆が一気に口の中に入って来て、むせ返してしまいました。

       

      ツルは目を丸くして見ています。

       

      キツネはあきらめずに二回目の挑戦!

       

      今度は、素早く首を上にあげました。

       

      すると、豆は塊になり細い瓶の中で詰まってしまい、中々、口の中に入って来ません。

       

      それでもキツネは何回か繰り返すうちにコツを掴み、豆が無くなるころには、自分の欲しい分量を食べられるようになりました。


      「ごちそうさまでした」

       

      キツネとツルは食事を終えました。

       

      二人の間に少しの沈黙が生まれました。

       

      ─────。

       

      それを破るかのように、

       

      『あのっ、』

       

      と、同時に声を出しました。

       

      お互い気まずそうに顔を下げてから、ツルが大きな羽をキツネに向けて先に話していいよ、という仕草をしました。

       

      それを見てキツネは言いました。

       

      「あのね、ボク、お皿でお食事出しちゃって意地悪だったね、ごめんね」

       

      ツルは答えました。

       

      「ううん、私こそ、意地悪してごめんなさい」

       

      「あのね、もう一度、今度は、食べやすい器で、お互い、食べやすい器でね、もう一回、お食事しない?」

       

      それを聞いてツルは目を丸くしながら、

       

      「私も同じことを言おうとしてました」

       

      キツネはキョトンとした表情でそれを聞きました。

       

      そして二人は同時に笑いました。


      数日後、二人はキツネの家で食事をしました。

       

      キツネは赤い縁の皿の上に料理を乗せ、ツルは透明な細長い口の瓶に料理を入れ、二人とも楽しく食事をしました。


      おしまい

       

       

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      雪だるま
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        カメがウサギに勝つ方法(イソップ物語より)

        「だから止めときなって言ったのにぃ」

         

        山の頂上でウサギはカメに言いました。

         

        「足の速いボクに、お世辞にも速いとは言えない君の足で、競争して勝てる訳がないじゃないか」


        のそのそと歩いてるカメの横で、歩調を合わせるように、ウサギが歩きながら話しかけてきました。

         

        カメは勝ち誇った顔をしているウサギをチラっと見て、

         

        「ウサギさん、競争はまだ終わっていませんよ」

         

        と、足を止めずに続けました、

         

        「約束しましたよね、往復して速く着いた方の勝ち、って」

         

        山のふもとからスタートして山を登り、頂上にある木を回ってスタート地点に戻る、という競争を二人はしていたのでした。

         

        「あぁ、そうだねぇ、確かに競争は終わってない」

         

        ウサギはあきれた表情を受けべて続けました。

         

        「でもねカメくん、ボクは折り返し地点の頂上で、キミがくるまで一時間も待ってたんだよ、途中で昼寝しても、まだ来ないんだもの退屈しちゃったよ」

         

        ウサギは肩を大げさにすぼめました。

         

        どう考えても勝負にならなそうな競争ですが、そもそも、なんで、こんな競争が始まったのでしょう。

         

        まず、ウサギがカメの足の遅さをバカにしたことが始まりでした。

         

        怒ったカメに、だったら勝負しようと、ウサギが言いました。

         

        カメは勝負を受けました。ただし、ルールは自分が決めると言いました。

         

        どうしたって勝つのは決まっている、と思ったウサギはカメのルールに従い、競争が始まったのでした。

         

        カメは無言で、のそのそと歩いて、木を回り折り返しました。

         

        ウサギは、その頑固なカメの姿を見て、軽く息を吐きました。

         

        「カメくん、キミって奴は素直じゃないねぇ……、まぁ、いいでしょう。先に行って、ふもとで待ってるよ」

         

        と、ウサギは軽快な足取りで木を回り

         

        「一時間後に、また会おう!」

         

        と、カメを追い抜いていきました。

         

        カメは、ウサギの後ろ姿を眺めながら、のそのそと歩きました。

         

        やがて下り坂に差し掛かりました。

         

        するとカメは、段々と小さくなって行くウサギの後ろ姿に向かって、ニヤリ、と笑みを浮かべました。

         

        (ボクはこの時を待っていたんですよウサギさん)

         

        カメはウサギの後ろ姿から目線を外し、進行方向に対して体を横向きにしました。

         

        (あなたが頂上付近でわざわざ待っていて、ボクをバカにすることも分かっていました)

         

        横を向いたカメ。

         

        (すべては計画通り)

         

        左が頂上側、右がふもと側、道は下り坂です。

         

        (このルールを、あなたがのんだ時点で、ボクの勝ちなのです)

         

        右側の足を二本、甲羅の中に静かにしまいました。

         

        (カメに、頭で勝とうなんて、100万年早いですね)

         

        頂上側にある左の足二本に力を入れました。

         

        「せ〜の、よっ」

         

        体が、右の方、つまり、下り坂の低い方に傾き始めました。

         

        そして、くるりと一回転。

         

        「もう一回、せ〜の、よっ」

         

        足を使って一回転、

        テンポよく足を使ってもう一回転、

        リズムに乗ってもう一回転、

         

        だんだんと下り坂で加速がついて、とうとう足を使わなくても回転し続けるようになり、全部の足を甲羅の中にしまいました。

         


        その頃、ウサギは全く力を出さずに、のんきに歩いて平然と山を下っていました。

         

        この速さでも勝利は約束されていました。

         

        退屈で、眠くなりそうです。

         

        ───コロコロ

         

        何やら後ろから音がします。

         

        コロコロコロ

         

        石でも転がって来たのかな?

         

        と、ウサギが振り向こうとした瞬間、

         


        コロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロ!

         


        体の横を、物凄い勢いで何かが転がって行きました。

         


        「───── へ?」

         


        ウサギは呆気にとられました。


        が、次の瞬間、カメだと気付きました。

         

        「ちょっと、カメくん」

         

        ウサギは慌てて全力で走りました。

         

        コロコロコロコロコロコロ!

         

        「ちょっと、ちょっと、ちょっと、ちょっと」

         

        全力で走っても、カメとの距離は縮まりません。

         

        コロコロコロコロコロコロコロコロコロコロ!

         

        「ちょっと、ちょっと、ちょっと、カメくん」

         

        ウサギは、力を振り絞って速く走りました。

         

        コロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロ!

         

        「ちょちょちょちょちょちょちょちょちょちょちょちょちょちょちょちょちょちょ」

         

        ウサギの足の速さも大したもので、徐々に転がっているカメに近づいて行きました。

         


        そうこうしているうちに、あっという間に、ふもとのスタート地点が見えてきました。

         

        ウサギは歯を食いしばって、出せる力を精一杯足に込め走りました。

         

        あとちょっとで、転がっているカメに追いつきそうでした。

         

        しかし、さすがに全力で走り続けるのには、限界がありました。

         

        ついに、スタート地点の手前で失速してしまい、カメに先を越されてしまいました。

         

        コロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロ!

         

        スタート地点に先に戻ったのはカメでした!

         

        カメは、全力で走るウサギに勝つことができたのです!!

         


        ウサギはスタート地点に倒れ込み、ゼーェ、ゼーェ、と激しく息をしました。

         

        そして、しばらくして、カメの姿を探しました。

         

        しかし、ウサギが周りを見渡しても、カメの姿は見えませんでした。

         

        「あれ〜、カメくん?」

         

        目を凝らして、よーく先の方を見ると、まだまだ勢いよく転がっているカメの姿を見つけました。

         

        「おーい、カメくーん、どこへ行くんだーい」

         

        ウサギは転がっているカメには聞こえないだろうと思い、小さく呟きました。

         

        「カメくん、あれじゃ海まで行っちゃうね」

         

        転がっているカメの姿を眺めながら、

         

        (誰か、止めてーーーーーーーーーーーーーーぇ!!!!!)

         

        と叫んでいる、声が聞こえたような気がしました。

         

        コロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロ!

         

         

         

        おしまい。

         

         

         

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        雪だるま
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          富士山を守れ!(江戸小話より)

           昔々、なやみを相談すると、なんでも解決してしまう和尚(おしょう)さんがいました。

           

          「どうなされた」

           

           今日は、役人が和尚さんを訪ねて来ました。

           

          「はい、実は和尚様、困ったことを言う者がおりまして」

           

          「困ったこととはなんじゃ?」

           

          「はい、海の向こうの国のつかいが来まして、富士山の美しさにほれこみ、どうしても富士山が欲しい、と言うのです」

           

          「富士山が欲しいじゃと!」

           

           さすがの和尚さんもビックリして長いくて白いまゆを上げました。

           

          「そうなんです。富士山をくれなければ、戦争をしかけるぞ、と申すもので困っています」

           

           役人は頭をかきながら、

           

          「富士山は我が国の象徴(しょうちょう)でもありますし、そもそも、あげるもなにも富士山は動かせませんからねぇ……」

           

          「フム」

           

          と、和尚さんは声を出して、目を閉じました。

           

           しばらくちんもくしたあとで、和尚さんは目を見開いて言いました。

           

          「欲しいと言うなら、くれてやればよい」

           

           和尚さんの言葉におどろいた表情をする役人に構わず和尚さんは続けました。

           

          「そのかわり、富士山を持ち帰る箱を持って来い、そしたらくれてやる、と言えばよろしい」

           

          「おおぉ、そんな手が!」

           

           役人は手をたたいて納得し、和尚さんに礼を言って帰って行きました。

           

           ところが数日後、同じ役人がまた相談に来ました。

           

          「なんじゃ、うまくいかなかったのか?」

           

          「はい、おはずかしい話で」

           

           役人は頭をかきながら話しました。

           

          「先方に、和尚様に言われた通り申したところ、始めは『そんな箱など作れない』と困っていました」

           

          「フムフム」

           

           和尚さんは目を閉じてうなずきながら聞いていました。

           

          「しばらくすると、話し合いがもたれたのでしょう『ならば、富士山をそこに置いたままで、自分たちのものということにしろ』と言い出したのです。嫌なら戦争だと」

           

          「フムフム」

           

           和尚さんをうなずきました。

           

           そして、しばらく静かに考えてから、目を見開きこう言いました。

           

          「では、置いたままそいつらのものにしてやろう」

           

           おどろく役人に構わず、

           

          「ただし富士山という名前は変えられないから、そいつらの国の名前を富士山と変えたなら、富士山をそいつらのものと認めてやろう、と申せ」

           

          「おおぉ、その手がありましたか!」

           

           役人は、手をたたいて納得して、礼を言って帰って行きました。

           

           ところが数日後、

           

          「なんじゃ、またダメだったのか」

           

          「はい〜、めんもくありません……」

           

          「しつこい相手じゃのぉ」

           

          「はい、和尚様から言われた通り申したところ『国の名前を変えろと、それは困った』となりました」

           

          「フムフム」

           

          「その後、例のごとく話し合いがもたれたのでしょう『箱もできぬ、国名を変えることもできぬ、もはや戦争で力ずくでいただくことにする!』と言われました」

           

          「フムフム」

           

          「よっぽど、富士山が欲しいのでしょう……、とは言え、まさか、戦争をするわけにはいきませんので、なんとか収めたいところです」

           

           和尚さんはうでくみをして「困ったもんじゃのぉ」と呟きました。

           

           今回は和尚さんも頭をなやませました。

           

           和尚さんは目を閉じて、しばらく考えました。

           

           役人を何もしゃべらず、じっと待ちました。

           

           しばらくの時が流れました。

           

           お寺の庭に、スズメがやって来て、チュンチュン、とはねて、エサはないかと地面をつついていました。

           

           和尚さんの目が“パッ”と見開きました。

           

           スズメは、いきおいよく飛びたちました。

           

           和尚さんは言いました。

           

          「よし、では戦争をしようではないか」

           

           役人はビックリして、少しよろめきました。

           

           和尚さんは続けて言いました。

           

          「受けて立つと言え、そのかわり、わがじん営は富士山に陣(じん)を構える、おまえらが欲しい富士山が戦場になって、美しい景観があれ果ててもいいのならせめてこい、と申せ」

           

          「おおぉ、それはイイ手ですね」

           

          「しかし、これがダメなら、もうお手上げじゃな」

           

           と、和尚さんがめずらしく弱音をはきました。

           

           役人は胸を張って、

           

          「それでダメなら、わがじん営は力の限り戦って、富士山にキズひとつ負わせず、守り切ってみせます!」

           

          「それは、たのもしいのぉ」

           

           和尚さんは笑顔で言いました。

           

          「ハイ、そのくらいの意気ごみで交渉してきます!」

           

           役人は力こぶしを和尚さんに見せ、帰って行きました。

           

           その後、役人は現れませんでした。

           

           そして、富士山で戦争が起こった、という報せもこず、和尚さんは寺の庭で、スズメが、チュンチュン、とエサを探しているのをぼんやりながめて、平和に過ごしました。

           

           

          おしまい。

           

           

          JUGEMテーマ:創作童話

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          雪だるま
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            お侍さんを黙らす方法(江戸小話より)

            むかしむかし、表町の隠居(いんきょ)と横町の隠居がいました。

             

            二人は、自分たちの店を息子に任せ、

            朝から、表町の隠居の家の前で長椅子に座り、

            大好きな将棋をさしていました。

             

            すると、どこからともなく、お侍さんがやってきて、

            不意に地面にしゃがみこんで、二人の対局をのぞきこみました。

             

            お侍さんは、しばらくは黙って見ていましたが、

            やがて隠居たちが一手さすたびに、

             

            「あ〜ぁ、その手は、ダメだろう!」

             

            「いやっ、そこは銀を動かさなきゃ!」

             

            「お、それはいい手だ、それでは、飛車を動かすしかねぇな」

             

            と、やかましく口を出してきました。

             

            隠居たちは、しばらくはがまんしていたのですが、

            気の短い表町の隠居が耐えられなくなり、

             

            「コレ、少しは黙っておれ!」

             

            と、お侍さんの頭をもっていた扇子(せんす)でポンと叩きました。

             

            お侍さんは、びっくりしたように目をまん丸に開けて、

            叩かれたところを手で抑えました。

             

            そして、なにも言わず、その場から立ち去りました。

             

            「これで集中して将棋ができる」

             

            と、表町の隠居は言いましたが、人の良い横町の隠居は、

             

            「将棋は静かでやりやすくなったが、

             お侍さんの頭を叩いたのは、まずかったんじゃねぇか?」

             

            「あ、そうか、相手はお侍だったか、カッとなって、

             つい手を出しちまった」

             

            この時代、お侍さんは、隠居たちのような商人よりも身分が上で、

            怒らせると、命をうばわれるかもしれないほど、こわい存在でした。

             

            「あやまった方がいいかなぁ」

             

            「そうだな、すぐにあやまったほうがいい」

             

            「よし、あ、でも、あの人の住まいはどこかのぉ」

             

            「あ、それはわしも知らんわい」

             

            と、隠居たちがのんきに話していると、

            先ほどのお侍さんが帰って来ました。

             

            地面に、どかっ! と腰を下したお侍さんの姿を見て、

            隠居たちは目を丸くしました。

             

            お侍さんは、頭に兜(かぶと)をかぶって来たのです。

             

            表町の隠居は、お侍さんをしばらく見てから、

            横町の隠居のほうを見ました。

             

            横町の隠居も驚いた表情をしていましたが、

            アゴを前にだして、ホレ、とあやまるように指図しました。

             

            表町の隠居は、

             

            「先ほどは、つい、カッとなり、

             手を出してしまい申し訳ございませんでした」

             

            と、丁寧に言って、頭を下げました。

             

            すると、お侍さんは大声で笑い、

             

            「気にするな、こうして叩かれてもいいように、

             兜をかぶってきた、ほれ、将棋を始めろ」

             

            と、手をパンパンならしました。

             

            隠居たちは不思議そうな表情で目を合わせましたが、

            気を取り直して、将棋をさし始めました。

             

            すると、お侍さんは、

             

            「そこは桂馬での方がよかった」

             

            「いわんこっちゃない、最初に取っておけばよかったんだ」

             

            「なんでその手をさすかなぁ、

             金を下げれば逃げられてしまうじゃないか」

             

            と、また口を出して来ました。

             

            隠居たちは、相手はお侍さんだからとがまんしていましたが、

            気の短い表町の隠居は、扇子を手にすると、

             

            「黙っておれと言うとるに!」

             

            と、無防備なお侍さんのお腹を突っつきました。

             

            びっくりしたお侍さんは、突かれたお腹に手を当てて、

             

            「くそー、今度は腹かーぁ」

             

            と言いながら、その場を離れて行きました。

             

            お侍さんがいなくなると、横町の隠居が慌てて言いました。

             

            「ほら、短気を起こしちゃいけねぇよ、相手はお侍さんだってのに」

             

            「分かってんだ、分かってんだけど、つい……」

             

            と、隠居たちが話していると、お侍さんがまたやって来ました。

             

            ドサッ、と地面に座るお侍さんを見て、隠居たちはビックリしました。

             

            今度は全身、鎧(よろい)を着ているではないですか。

             

            お侍さんは機嫌のイイ口調で、

             

            「将棋も戦(いくさ)じゃからなぁ、

             見る側もそれなりの格好で見ないとな」

             

            と、兜を叩き、鎧のお腹の辺りを触りました。

             

            「さぁさぁ、始めなされ」

             

            お侍さんは大声で言いました。

             

            隠居たちは、やれやれ、という表情で将棋をさし始めました。

             

            「ほら、下手くそ、そんな手があるか」

             

            「うわぁ、そんな手を打つならやめちまえ」

             

            「ダメだ、話にならん、下手な手だ」

             

            と、お侍さんは言いたい放題、口を挟んできました。

             

            しばらく耐えていた表町の隠居でしたが、

            カッ、となって、扇子を手にしました。

             

            それを見て、横町の隠居が手を伸ばし、扇子を抑え、

            やめとけ、と言わんばかりに首を横に振りました。

             

            「どうした、対局が進まねぇなぁ、早よさせ」

             

            と、なかなか隠居たちが次の手をささないので、

            お侍さんはしびれを切らしてそう言いました。

             

            そして、ニヤっと不敵な笑いを浮かべながら、

             

            「それともなにか、また扇子で叩くのか? それとも突くのか?

             やれるもんならやってみろ」

             

            と、兜と鎧をこすりながら高笑いをしました。

             

            その言葉で、カチン、ときた表町の長老は、扇子を振りかざしました。

             

            しかし、完全武装のお侍さんのどこにも叩く場所がありません。

             

            「どうした、叩かんのかぁ」

             

            とお侍さんは、表町の隠居をバカにするように言いました。

             

            扇子を振り上げたまま手出しできないで震えている表町の隠居に、

            お侍さんは、勝ち誇ったような顔を向けていました。

             

            その時、横町の隠居は立ち上がりました。

             

            そして、素早い動きで、お侍さんの、わきの下に両手を入れました。

             

            そこには鎧がありませんでした。

             

            呆気に取られているお侍さんに、横町の隠居は、

             

            「お侍さん、うるさくすると、こうですよ!」

             

            と、言って、

             

            「コチョコチョコチョ」

             

            と、お侍さんのわきの下をくすぐり始めました。

             

            「こ、ハハハ、これ、ハハハ、な、ハハハなにをする」

             

            お侍さんは文句を言いながら、

            くすぐったくて笑いが止まりませんでした。

             

            横町の隠居は、さらにくすぐり続けました。

             

            「ハハハ、これ、ハハハ、やめないか」

             

            お侍さんは、体をクネクネさせて、笑い続けました。

             

            横町の隠居は手を休ませません。

             

            「ハハハハハハ、くるし〜、ハハハハハハハハ、」

             

            お侍さんは笑いが止まりません。

             

            そして、さんざん笑い転げたあと、

             

            「分かった、分かった、降参じゃ、わしの負けじゃ」

             

            と、涙を流しながら言いました。

             

            横町の隠居は手をわきの下から離しました。

             

            「ふーっ」

             

            と、お侍さんは息をついて、

             

            「悪かった、もう口出しはせん、おとなしく観戦しよう」

             

            と言って、座り直しました。

             

            やがて、隠居たちは将棋をさし始めました。

             

            それを、お侍さんは鎧を着たまま静かに眺めていました。

             

            通りを歩く人たちは、その光景を横目で見て、

             

            なにごとか? 

             

            と、首をかしげていきましたとさ。

             

             

            おしまい。

             

             

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